低迷していた業績を回復させるべく経営に復帰したのだが、業績低迷の遠因が社員のモチベーション低下にあることを創業経営者はすぐさま見抜いたのだ。

 世の中はデフレ時代真っ盛り。人余りで就職難も激しく、人材を人手扱いして使い捨てにする社員に優しくない企業も跋扈していた。

 業績が低迷し、世間がそうした環境にあるなか、すぐには売り上げや利益に結びつかない人材への投資はサラリーマンの経営トップでは簡単には決断できない。

人材への投資は回収できる

 今回、ファンケルが打ち出した働き方改革のそもそもの根っこは池森会長の復帰にあるという。「創業の原点に立ち返り、ファンケルらしさで再成長を目指す」ために、まず人事育成と教育に特化した専門の組織としてファンケル大学を立ち上げ、社員の再教育に力を入れた。

 創業者ならではの大胆な経営改革を実行するなかで、人事としてもスピード感をもって様々な働き方改革を検討し取り組んできた。今回の改革はその1つでもある。

 契約社員の正社員化などでファンケルはかなりの資金負担を覚悟しなければならない。しかし、「ファンケルで安心して長く働ける環境を整えることが社員のモチベーションアップにつながり、それが会社の業績にもつながっていくと考えています」と人事部の熊谷課長は話す。

 社員に投資し、社員が活発に働くようになり様々なアイデアが生まれることで、それが同時に会社の成長につながるというわけだ。

 今回の働き方改革はまだ手始めであり、二の矢、三の矢を考えているという。

 先進国の中でサービス産業の労働生産性が低いのが日本の短所の1つだが、こうした改革が根づいてくれば、生産性向上にも大きく貢献するかもしれない。