65歳を迎えた段階で、希望すれば会社との相談のうえ再雇用という形で「アクティブシニア社員」となり、毎月の労働日数、1日の労働時間などを決めてフレキシブルに働ける体制を整える。

 「シニアの方がそれぞれのペースで働けるような働き方を提供しています」と人事部の熊谷課長は話す。

 この制度の背景には労働人口の減少がある。若くて優秀な人材の確保が年々難しくなる一方、高いスキルを身につけた熟年社員が定年制度で会社から離れるのは、大きな損失となるからだ。

社員のモチベーションが落ちてきている危機感

 一方、社員にとっても年金が支給されるのは65歳になってからだし、元気なうちは働き続けたいという思いもある。

 もちろんやる気のある社員は定年を契機に新しい仕事にチャレンジすることもできる。しかし、多くの熟年社員にとっては、慣れた職場で働き続けられることは老後の不安を解消する大きなファクターとなる。

 ファンケルがなぜこうも次々と働き方改革を打ち出すのか。最大の理由は人材確保である。店員に限れば有効求人倍率は2.0に近づきつつあり、年々人材が取りにくくなっている。

 企業の付加価値は社員が生み出す。企業を社員にとってより魅力ある形に変えていくことが企業が存続するうえで最大のカギとなる。

 いまからちょうど5年前、ファンケルの創業者である池森賢二氏が会長執行役員として経営に復帰した際、最も強く感じたのが、「ファンケルらしさが失われ、社員のモチベーションが落ちてきたのではないか」ということだった。