腸内細菌はダイエット法論争に終止符を打つのか

『ダイエットの科学』で食による健康法を再考する

2018.03.23(Fri) 漆原 次郎
筆者プロフィール&コラム概要

腸内細菌の多様性こそが重要

 こうして数々の「神話」をただしていく著者は、では、ダイエット法はどうあるべきだと主張するのか。

 著者が本書でとりわけ強調するのが、体にいる腸内細菌の状態をよくすることの大切さだ。

 腸内細菌がもたらしてくれる恩恵を並べていく。食べ物の消化。カロリー吸収のコントロール。生命維持に必要な酵素やビタミンの供給。免疫系の正常性の維持などなど。微生物コミュニティの変化が、肥満のほか、糖尿病や心臓病などの肥満により引き起こされる病気にも関係しているようだとも言う。

 人間は体内で物質を分解できる酵素を30種類も持たない一方、1種類の腸内細菌だけでも植物の分解に対応する酵素を260種類持っていることから「私たちがいかに腸内細菌に頼っているかがわかる」と述べる。また、人間は遺伝子によってどのグループの腸内細菌が増えるかなどをコントロールする一方で、腸内細菌も人間の遺伝子のオン・オフを切り替えるなどして、人間を操ってもいるともいう。

 こうも腸内細菌は大切な存在であることが分かってきた。近ごろマスメディアで腸内の微生物群集を意味する「腸内フローラ」がさかんに取り沙汰される理由も理解できる。

 著者は「体にすんでいる微生物のコミュニティを、あなたが管理している庭だと考えることだ」と勧める。そして「重要なのは多様性である」とも唱える。

 では、腸内細菌の多様性を高めるにはどうすればよいか。やはり食事の仕方に立ち返ることになる。著者は「摂取する食品の種類を増やそう。とくに果物、オリーブオイル、ナッツ、野菜、豆類など、また成分としては食物繊維やポリフェノールを意識する」と述べる。これらは、いずれも体の健康によく働く腸内細菌を増やすことにつながる食材だそうだ。

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1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


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