全体を見てこのような社会生態を計画をした存在がいるわけではありません。個々の遺伝子レベルでこうしたシステムが形づくられていることを考えると、長い年月を経ながら生物の生態に自然と備わっていった叡智の偉大さを改めて感じます。

組織には多様な価値基準が必要

 さて、アリの生態を見てきたところから、今度は私たちのフィールドであるビジネスの文脈に頭を切り替えていきたいと思います。働かない働きアリがいるというアリの社会生態から見えてくるマネジメントの「理(ことわり)」は何でしょうか。

 様々なことが言えますが、中でも大きなものは、「多様性は組織が生き残る確率を高める」ということでしょう。

 ダイバーシティ(多様性)のない組織は一時期的にとても繁栄することがあったとしても、劇的な環境変化が起こった際には一気に崩壊する危険性が高まります。

 私たちがマネジメントを行う際、業績へのプレッシャーからどうしても短期的な成果に結び付く特定の価値基準だけで人を評価判断しがちになります。しかし、そのことは組織に多様性が生まれる余地を徐々に奪い、長期的には生き残る確率が下がってしまう危険性を孕んでいます。

 もし、10年、20年、さらには100年と長く栄え続ける会社を創ろうとするのであれば、多様な価値基準を持ち、多様な人が活かされる組織にすることが重要なのです。