働かない働きアリは、なぜいるのか?

 このようなアリの社会生態は、一見、非効率に見えるかと思います。全ての働きアリが一生懸命働いた方が、コロニーは繁栄しそうですよね。

 しかし、実際には、このような社会生態を持ったアリが滅びるのではなく、種として生き延びているということは「生存戦略としては、実は、適している」ということを意味します。逆に言うと、全員が“働き過ぎの働きアリ”だと、種が存続していく上では不都合なことがあるのです。

 例えば、全てのアリの反応閾値が同じだった場合、餌が発見されたら一斉にみんな出て行ってしまいますよね。すると次の餌が発見された時に誰も対応できなくなります。外敵が現れるなんてことがあったらもう大変ですよね。

 それから、アリにも「過労死」があると言われていて、全員が働き過ぎると一気に働き手が死んでいってしまうということが起きる可能性があります。

 もし、自分がそんな習性を持つアリの女王アリだったとしたら心細すぎて夜も眠れません。

 また、実は、反応しにくいアリも、全ての刺激に反応しにくいわけではなかったりします。「餌の発見!」という刺激には反応しにくいアリでも、「敵襲来!」という刺激や「巣壊れた!」「卵壊れた!」といった別の刺激には反応しやすかったりします。

 つまり、反応閾値の違いは優劣ではなく個性・個体差であり、多様な個性・個体差がある(ダイバーシティがある)からこそ、状況や環境の様々な変化に適応し、種として存続する確率を高めることができているのです。