女性活躍推進の事例から学ぶ成功ポイント

 では、女性活躍推進を企業全体に良い影響を与えた、3社の成功事例を見ていこう。

事例1【エンタテインメント企業】:初の女性管理職登用
 夜の勤務が多く、かつては女性が長く勤めて活躍することが厳しい状況にあった。女性客が増加傾向にあり、女性向けサービスや飲食の開発が求められていたが、女性社員にマネージャー昇進への打診をすると断られてしまっていた。同社がとった対策は以下のとおりである。

<成功ポイント>
・昇進を断られても、フォローする意思を伝えて説得する
・孤立させないよう、昇進した人をサポートする
・キャリアの理想を押し付けない

 その結果、初めての女性管理職が誕生。女性視点でのサービス改善に成功、男性も働きやすくなったと評価されるようになった。女性ならではの視点で改革に取り組んだことで、結婚や出産を迎えても継続的に働く女性が増えた。

 

事例2【情報通信産業】:全社を巻き込んだ推進活動
 会社の規模拡大を目指していたが、女性の退職者が多いのが課題だった。そこで、まず社長が全社の定例会で「女性が輝く会社」宣言を発表。現状分析を行う。

<成功ポイント>
・女性活躍推進の旗印を作る
・現状分析には男性にもヒアリングを行い、職場全体を巻き込む
・トップダウンとボトムアップのバランスを取りながら、経営陣と密に連携する

 男性も巻き込んだことで全社的な関心が高まり、女性活躍に関する内容にとどまらない業務改善案がボトムアップで出てくるようになった。さらに、女性がリーダーシップを発揮する姿を見て、次世代のリーダーになりたいという女性社員も現れた。

 

事例3【売却物件のインテリアコーディネート事業】:対話が生み出した女性活躍推進
 創立当初の業務は、社員が家具を物件に運び入れてセッティングをする力仕事がメインだった。そのため、男性が運搬、女性がコーディネートというように、自然と男女分業制が出来上っていた。その後、ビジネスが急拡大し、人員を増やすことなく多くの案件に対応できるように力仕事をアウトソースすることに。これによって“男女同一業務”体制で、全員がコーディネートに注力できるようにした。この変化に戸惑ったのが、力仕事が大きなウェイトを占めていた男性社員だ。そこで同社は次のような対応をとった。

<成功ポイント>
・なぜ今この取り組みをやっているのか? 幹部が社員と面談し、お互いを理解する機会を用意
・男女問わず、変化をサポート

 結果として、社員の定着率が上がり、働きやすい環境を探している女性、子育てが一段落した女性など、様々なキャリアを持った優秀な女性の入社も増加。会社の全体的な成長にも繋がった。

 トーマツ イノベーション 人材戦略コンサルティング第一事業部長 川合真美氏は「女性が結婚・出産を経験しながら昇進・昇格をするには、大きな覚悟がいる。そして、女性個人の努力だけに任せるのではなく、企業のサポートが必須です」と語る。

トーマツ イノベーション 人材戦略コンサルティング第一事業部長 川合真美氏

「女性活躍に取り組むと、女性のみならず男性も働きやすい職場になった、求人が増えたという声も多く聞かれます。つまり、女性活躍は、会社全体にプラスになるのです」

 企業事例から導き出された成功ポイントは、「女性活躍推進を女性に押し付けない」「職場全体を巻き込んで取り組む」「昇進昇格の節目をサポートする」という3点に集約されるだろう。

 今回発表された調査結果、女性活躍推進を進めている企業の事例が多くの企業に伝播し、中小企業の女性活躍推進が前進することに期待したい。

「人手不足」関連倒産(2017年) - 東京商工リサーチ