IoT分野の重要なキーテクノロジーとして注目を集めている「LPWA(Low Power Wide Area)」。これは、その名のとおり「省電力・広域通信」を可能とする無線技術だ。なぜこの技術が注目を集めるのか。それはIoT普及の壁となっている電源・コスト・エリアの課題を解消し、IoTの適用範囲を格段に広げる可能性を秘めているからだ。すでに日本でも2018年1月に、「KDDI IoT 通信サービス LPWA(LTE-M)」の提供が、通信キャリアの先陣を切って開始された。これによりどんなユーザーメリットが生まれるのか、ここではその特長や適用例などについて紹介したい。

IoTは、どうしたらもっと普及するのか

クラウド、ビッグデータ、IoTといった先進技術は、今やグローバルビジネスの進化を支えるテクノロジーとして不可欠な存在となっている。中でも、モノのインターネットと呼ばれるIoT(Internet of Things)は、工場や倉庫の生産・物流・品質管理などに加え、スマートメーター、災害発生の予兆検知、建設・土木工事現場の遠隔監視など、さまざまなシーンで新たな価値を生み出している。

だが、IoTのさらなる普及拡大に向けては「乗り越えるべき壁もあります」と、KDDI ビジネスIoT企画部長の原田圭悟氏は指摘する。

KDDI株式会社 ビジネスIoT企画部長 原田 圭悟氏

「従来のIoTデバイスは、消費電力が大きいため、電源を確保できる場所に設置することが前提でした。またLTEに代表される携帯電話網は通信コストが高いため、一定の費用負担に見合うビジネスモデルでしか活用されていないのが現状です」

IoTによるデータ活用において、その取り組みが加速しない課題とは?

通信エリアに関しても、既存の携帯電話網は山間部などの非居住地、地下室やマンホールといった場所では使えないケースが多く、IoT活用には適していないとされていた。そこで、こうした課題を解決するために登場したのが、新たな無線技術「LPWA」である。LPWAが従来の技術と大きく違うのは、少ない電力消費で長距離のデータ通信が行える点にある。LPWAは世界中で複数の規格が策定されているが、IoT向けのLPWAとして本命視されているのが「LTE-M(Long Term Evolution for Machines)」である。

既存のLTEの空いた帯域を使うLTE-Mは、広域なエリアカバレッジに加え、上り/下りとも最大1Mbpsの通信速度を持ち、扱うデータ量が少ないIoT通信としては必要十分な実力を備えている。また、無線免許を必要としない周波数帯を利用する他のLPWAとは異なり、日本でLTE-Mのサービスを提供するのは、総務省から免許を交付された通信キャリアに限定される。各キャリアに割り当てられた専用の周波数帯で通信を行うため、電波干渉が起こりにくく、安定した接続環境が整えられるのである。