他の自治体でも、テレビ会議システムを利用した遠隔授業や子どもたちの交流は試みられている。だが、通常の規模の学校であれば、テレビ会議など使わずに学校内の議論なども完結できる。今回の導入には、市内に3校の極小規模校を抱える、郡上市ならではの強い動機があったのだ。

 授業での活用で、一番多いのは道徳の時間。また、理科の実験や観察の分野、また社会の地域での調べ学習など、考察や意見交換が必要な分野で主に使われている。

 だが、國居氏は、遠隔授業を行うときだけでなく、普段の授業にも影響を及ぼしているとも語る。

「『今度、あそこの学校と意見交流ができるから』と、本当に生き生きして、普段の授業へ意欲に取り組むようになりました。交流を目的に置くことで、授業が充実してきたようです」

 特別活動や総合的な学習の時間では、お互いの学校の特色を生かして、地域の伝統をどう伝えていっているかなど発表し、話し合ったりしているともいう。

 アクティブラーニングの必要性が叫ばれる中、山間部の極小規模校ではそもそもの意見交換が難しいと思われていたが、今回のシステムの導入が新たなコミュニケーションと学習の方法を生み出しているようだ。

山間部ならではの働き方の課題

 また、このテレビ会議システムの導入で恩恵を受けるのは、子どもたちだけではない。教職員の働き方にも、大きな影響を与えている。

 1時間の研修や会議のために、市内の移動であっても峠を越える場合は、往復2時間をかけて移動することもあった。特に、「一人職」と呼ばれる養護教諭や事務職員など、常に学校にいてもらわないと困る役職では、今回の導入の恩恵は非常に大きいという。

「たとえば、養護教諭が会議や研修のために学校を空けてしまうと、もしそのとき病気や事故があったらどうするかという、リスクがあります。その点、学校にいながらにして会議ができるのは、学校運営上でも非常に大きなメリットです」