成長の阻害要因は何か?

 子どもは個性がさまざまだ。成長を妨げる原因もそれぞれで違う。それさえ取り除けば瞬く間に成長を遂げるのに、なかなかその原因が何なのか、見抜いてくれる大人に出会うことができず、成長の機会を逃している子は多いように思う。

 個性さまざまな子ども一人ひとりの、成長を妨げている原因を突き止めるには、どうしたらよいのだろう? そして、処方箋を個性に合わせて提供するにはどうしたらよいのだろう?

 そのコツが、自己効力感ではないか、と私は考える。「できない」が「できる」に、「知らない」が「知る」に変えられる、着実に自分は成長していると実感できる感覚、自己効力感が得られさえすれば、人は成長することが楽しくなり、努力を努力とも思わずに楽しく努力する

 ところが上述した2人の子どもは、それぞれの事情で自己効力感が得られない状態になっていた。努力しても空回りするから、努力することを諦めてしまった状態だった。ならば、「できない」を「できる」に変えられる、着実な成長を実感できる状態に持っていってやればよい。

 前者の子どもはスペルミスが空回りの原因だったし、後者の子どもは意識が空想に奪われることが原因だった。ならば、その原因に適した処方をして、空回りしないですむようにし、着実な成長を実感できるようにしてやればよい。自己効力感が得られるところまで持っていってやれば、子どもは教えなくても勝手に成長するようになる。

 これは部下の育成においても同じだ。自己効力感が得られず、空回りしているのはなぜなのか。その原因を話し合うことで突き止め、それに少しずつ対処していけば、歯車がガチッと噛み合ったように、自己効力感を得られるようになる。

 上司は、部下が自己効力感を得られる状態になっているかを見守り、それができていないなら手助けする。自己効力感が得られていたら、報告・連絡・相談だけしっかりさせて、正確な状態を把握すれば、なるべく放っておく。そうすると、部下はのびのびと自分の能力を伸ばし、発揮させるものだと、私は考えている。

 詳しくは、拙著『子どもの地頭とやる気が育つおもしろい方法』(朝日新聞出版社)、『自分の頭で考えて動く部下の育て方』(文響社)をご覧いただきたい。