シェールガス開発を余儀なくされるサウジアラビア

財政状況の悪化で原油輸出の拡大が急務に

2018.03.16(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52581
  • 著者プロフィール&コラム概要

 ムハンマド皇太子の真の狙いは最新鋭武器の調達だったのではないだろうか。

 サウジアラビアと英国の両政府は3月9日、「英航空・防衛大手BAEシステムズが開発した戦闘機タイフーン48機をサウジアラビア側が購入することについて最終調整を進める」ことに合意する文書に署名した。英国に先立ちエジプトを訪問したムハンマド皇太子は3月4日、現地メディアに対し「イランとトルコと過激派が悪の三角形だ」と述べ、エジプト政府との間で「地域の国々の分断を広げようとする試みの阻止に向けて協力する」ことなどを確認した(3月7日付ブルームバーグ)。そのためには最新鋭の武器は必須である。

 3月12日にストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が公開した2013~2017年の武器輸入に関する報告書によると、サウジアラビアの武器輸入量はインドに次ぐ世界第2位となっている(2008~2012年に比べ225%増)。サウジアラビアに最も多くの武器を輸出しているのは米国(全体の61%)で、その次が英国(同23%)である。昨年5月の米トランプ大統領のサウジアラビア訪問の際、サウジアラビアは米国と110億ドル相当の武器購入契約を締結した。それに続き、ムハンマド皇太子は英国からも巨額の武器購入を強力に進めようとしているのではないだろうか。

財政収入拡大に向けてあらゆる手を打つサウジ

 サウジアラビア政府は一連の汚職取り締まりで、1000億ドル相当の資産を没収したという。金回りが良くなったと思ったからだろうか、ムハンマド皇太子ばかりかサルマン国王までもイラク政府に対し「世界最大規模のサッカー競技場」をプレゼントするとの約束をしたようだ。汚職取り締まりについては一件落着したとの印象が強まっている。

 しかし、状況は沈静化したわけではない。3月12日付ニューヨークタイムズは、「大規模な汚職取り締まりで身体を拘束された人々が虐待を受けたことにより釈放後も恐怖心や不安感に苛まれている」と報じた。同紙によれば、虐待を受けて少なくとも17人が入院し、拘束中に死亡したある将軍は首の骨が折れていたという。さらに王子や閣僚、大物実業家を含む容疑者381人は依然軍の監視下に置かれており、位置追跡用の足輪の着用を強制されている人もいるようだ。

 このような政情を反映してか、1月のサウジアラビアの金融機関の民間セクターへの貸出しが少なくとも20年来で最低の水準となっている(3月5日付ブルームバーグ)。サウジアラビア政府は財政の穴埋めのために今年も国際金融市場から310億ドル規模の借り入れを行う予定だという(3月2日付ブルームバーグ)。昨年はトータルで360億ドルだったが、今年はその規模を上回る可能性がある。汚職取り締まりにより没収した資金の回収の目途が立っていないことから、財政状況はむしろ悪化しているのだろう。

4
スマートエネルギー情報局TOPに戻る
PR
PR
PR
バックナンバー一覧 »

POWERED BY

  • ソーシャルメディアの公式アカウントOPEN!
    TwitterFacebookページでも最新記事の情報などを配信していきます。「フォロー」・「いいね」をよろしくお願いします!
Twitter
RSS

 

経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

オリジナル海外コラム

米国、欧州、中国、ロシア、中東など世界の政治経済情勢をリアルに、そして深く伝えるJBpressでしか読めないオリジナルコラム。

>>最新記事一覧へ