シェールガス開発を余儀なくされるサウジアラビア

財政状況の悪化で原油輸出の拡大が急務に

2018.03.16(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52581
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 こうした情勢から、世界の原油需要は今年第2四半期に下振れする可能性も指摘されている(アラブ首長国連邦のマズルーイ・エネルギー相)。

 3月7日、エクソンモービルのウッズCEOから「増産が続く一方、需要が後退し始めれば、原油価格は再び1バレル=40ドルへと下落する可能性がある」との衝撃的な発言が飛び出した。当社は「今後5年間は低コストで短期間に成果が得られるパーミアン鉱区でのシェールオイル開発に注力する」としているが、原油市場に再び「冬の時代」が到来してしまうのだろうか。

ムハンマド皇太子が英国訪問、真の狙いとは

 原油価格の今後に暗雲が立ちこめる中、「ビジョン2030」を掲げて石油に依存する経済からの脱却を目指すサウジアラビアのムハンマド皇太子が英国を訪問した。3月7日、サウジアラビアと英国政府は「今後10年間で最大650億ポンド規模の相互貿易・投資を目指す」ことで合意した。対象分野は文化・娯楽、医療サービス、生命科学、再生可能エネルギー、防衛など多岐にわたる。

 ムハンマド皇太子の狙いは、「ビジョン2030」の主な資金源と目される国営石油会社サウジアラムコの新規株式公開(IPO)のための環境整備だと見られる。つまり、厳しい欧米の情報開示などの上場ルールを緩和させたいということだ。

 企業価値2兆ドルとされるサウジアラムコへの誘致意欲が強いロンドン証券取引所は上場ルールの緩和を検討しているという(3月8日付日本経済新聞)。ムハンマド皇太子は英国からの譲歩を突破口にして、ニューヨークをはじめとする世界の株式市場でサウジアラムコ上場を2018年後半に円滑に実施する意向だろうと思われていた。だが3月11日付フィナンシャルタイムズは、「サウジアラムコのIPOは2019年まで先送りされる可能性が高いとサウジアラビア当局者らから通知されている」と報じた。ロンドン証券取引所のルールが緩和されたとしても、サウジアラムコ上場の準備が2018年後半までに間に合わないということのようだ。

 では、なぜこのタイミングでサウジアラビアはトップ外交を行う必要があったのか。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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