設置したカメラで状況を正確に認識し、ロボットアームは最適な方法で動作する

 物流業界で人手不足が深刻さを増している。商品の注文受付から決済までの“入口”にあたる受注業務のデジタル化は急速に進展したが、一方で倉庫からの商品出荷や配送という“出口”の多くはデジタル化から取り残されたままだ。

 解決する方法はないのか。答えの代わりにまず、2017年11月にネット上に公開された次の動画を見ていただきたい。中国のネット通販2位、京東集団(JDドットコム)が上海に開設した大型物流センターの内部を撮影したものである。

JDドットコムの物流センター(YouTubeのJD.com,Inc.チャネルから)

 物流センターへ商品が入荷すると、ローラーコンベアの上を流れてくる商品をロボットアームが器用に持ち上げ、プラスチックコンテナに整然と収納して保管棚に送る。注文が入ると、対象商品を収めた保管棚のコンテナが所定の場所まで送られ、ロボットアームがコンテナから商品を取り出して梱包工程に引き渡す。そして、自動梱包されて出荷準備が整った商品を搬送ロボットが出荷エリアに運んでいく。

 ご覧の通り、物流センターの中に人影は見えない。JDドットコムの動画は、すでに利用可能な数々のテクノロジーを駆使すれば、物流業界が直面している人手不足という難問の解決が可能なことを示している。

長期間かかるロボットへのティーチングを不要に

 ロジテック――。ロジスティクスとテクノロジーの造語で、倉庫内を縦横無尽に自律移動する搬送ロボットなど、物流革新を促進するテクノロジーが注目を集めている。ロジテックの粋を結集したJDドットコムの物流センターは、倉庫内のオペレーションを完全に無人化した世界初の例だとされる。

 この完全無人化を実現するにあたり、日本のベンチャーMUJINが極めて大きな役割を果たした。同社は従業員数45人のうち約6割を、10カ国以上から集まった海外人材が占める。そして、産業用ロボットの制御装置「MUJINコントローラ」を開発した。