――こういう発想がなかった時代、スキルを生かし切れなかった人も、多かったのではないでしょうか。

川上 社会のあり方に合わせようとしてしまい、そういうことを考えてはいけないとか、考える自分がダメなんだと責めてしまう人もいます。ですので、そこは旧来の考え方から解放されなければなりませんし、選択肢を増やさなければなりません

 キャリアを継続するための仕事をやろうと思うと、どうしてもフルタイムになってしまいます。そうすると、家庭を犠牲にするのかと板挟みになりがちです。でも、そもそも家庭は女性がマネージメントしなければならないなんて誰が決めたのでしょうか。

一方で男性の役割は

――女性の働き方を考えるためには、男性の役割も考える必要があると思います。「夫の家事・育児への取り組み2017」の調査では、不満を持つ女性と持たない女性が、ほぼ半々でした。夫の役割についてどのあたりを認めていて、どのあたりに不満があるのでしょうか。

しゅふJOB総研「夫の家事・育児への取り組み2017」より。
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川上 夫婦間によっても違うという話だと思います。私自身もデータをとったときに気になって、自分の妻に聞いたのですが、不満はないと。ただ、そこで話し合ってみると、いろいろなことが出てきました。結局は、その夫婦間で見えない不満をためているケースが結構あって、家事をどうシェアするかの話し合いが、きちんとなされていないケースが多いのです。

 ただ、忘れられている点として、夫側はなぜそこまで家事をしないかという理由の1つに、夫側が家庭の収入の責任を負っているということがあります。「妻が家事」というイメージに紐付けられているのと同じように、夫は「自分が稼がなければいけない」と世の中から見られています。そこも同時に解放されないと、夫側も家事をしようという気持ちになりにくい面もあると思います。

――どうしたら、そういう社会的なバイアスを崩していけるでしょうか。

川上 まずは、こういう情報を目に見える形にして伝えていくことだと思っています。それによって、たくさんの方の目に触れることで、「そういう見方もあるのか」というように、アンコンシャス・バイアスをアンコンシャスではなくすというのが、まず大事かと思います。しゅふJOB総研も、その一翼を担う存在であればと願っています。

 次に大事なのは、事例が増えていくことだと思っています。最近、僕が見てかっこいいなと思うのは、朝、新宿駅で、赤ちゃんを前に抱いて出勤している男の人です。そういう姿を実際に目にするようになれば、そこに恥ずかしさはなくなってきますし、ずいぶんと変わるだろうなと。

 ただ、嫌なのは、頑なになってしまうことです。1週間の家事時間などよく比較で並べられますが、「男ももっと家事をしなくちゃいけない」とか「最低3時間やらなきゃいけない」とか、本来は他人から押しつけられるものではありません。

 家事が得意な男の人であれば家事をもっとやればいいし、それによって時間が割かれるのであれば、その分、妻が収入を確保するというバランスもあっていいはずです。また、家事代行のサービスや食器洗浄機の導入などで、カバーすべき絶対量を減らすこともできます。そうして、家族の中で話し合いながらきちんと解決していければいいのではないかと思います。