地域を盛り上げるテレワークの可能性

 テレワークは都会に社屋を構える大企業だけの施策ではない。筆者はテレワークによる「地方」の課題解決の可能性も模索している。

地方が抱える課題・将来への不安として、筆者は下の6つを列挙している。

(1):少子高齢化による労働力不足
(2):少子高齢化による高齢者を支える人手の需要増
(3):雇用機会の減少
(4):(1)~(3)の課題による経済の減退・縮小
(5):(1)~(3)の課題による将来への不安増大
(6):(1)~(3)の課題による若者の都会への流出
 

 このような理由による労働力不足に対して、筆者は「働きたくても働けない」人たちの存在に注目している。

 家事や育児を抱える女性はもちろん、高齢者などで長時間の通勤が難しい場合でも、可能な範囲で仕事をできるのがテレワークの最大のメリットの1つだという。「地域に潜在する働き手」の就労意欲を、テレワークによって成就させようというわけだ。

 実際に、かつては大企業の工場が誘致の対象であったが、最近では「サテライトオフィス」を開設し、そこに都会から企業を呼び込むという事例が出てきている。こうすることで地方に新たな雇用が生まれ、また親の世話や介護などの事情で都会を離れざるを得なくなった人も、自分のスキルを生かせる仕事を続けられるかもしれない。

 同書では、福井県鯖江市、大阪府大阪狭山市、秋田県大館市などの取り組みを、担当者への聞き込みを交えて紹介している。すでに新しい働き方は、地方で始まっているという。

 このような働き方の選択肢が増えることは、人生の選択肢が増えることにつながる。仕事か家庭か二者択一を迫ってきたこれまでの社会は、いまや両立を目指す社会に変わろうとしている。テレワークは、その代表例の1つとして定着していくかもしれない。