テレワークをうまく導入するには

 では、実際にテレワークを導入する際には、どのような障壁があり、それらをどう取り除いていけばいいのだろうか。本書はその点も、筆者の経験をもとにポイントをまとめている。

 筆者は「情報インフラの整備」「制度の整備」「組織風土の醸成」を成功の3要素として挙げる。

「情報インフラの整備」は、テレワークの形態や運用を検討し、機器を導入するなど、事前の整備がこれに当たる。また「制度の整備」としては、テレワーク勤務を通常の勤務と同等に位置づけ、利用時の手続きを簡略化するなど、実際に運用していくための社内制度の検討も必要になる。

 しかし筆者は、この2つだけではテレワークの利用は促進されないと指摘する。この2つの要素に加え、何より「組織風土の醸成」が成功の要になるのだという。

「まず管理職層にテレワークを理解してもらわなければ、それぞれの職場でテレワークを行えるような風土にはなりません」

 そのために筆者は佐賀県庁で、まず庁内の全管理職を対象に、週1回のテレワーク実施(とその報告)を義務づけた。

「管理者層にテレワークとはどのようなものか、みずから体験して理解をしてもらうことが重要と考えました。職員や部署全体にとって、さらに管理職本人にもメリットがあることを認識してもらう必要があったのです」

 そうすることで、管理職以外の職員に対しても、身近でテレワークが行われる状況が作り出され、現場レベルでの職員の間でも、テレワークについて話題に上るようになったという。

「こうした試みが浸透するにつれ、組織に所属する誰もがテレワークを特別視せず、その特性を理解するようになれば、スムーズな導入が可能になります」

 そうすれば、「普通の働き方」の選択肢の1つとして、出張や有給と同様に考えられるようになるかもしれない。