ウルリッチ教授は、「HRテクノロジーを既存の人事業務の効率化のための手段としてのみ捉えてしまうと、ただのブームで終わる」と警鐘を鳴らした。なぜなら、既存の人事業務の多くはすでにERP(Enterprise Resource Planning:経営資源を管理するための情報システム)によって効率化が進んでいるからだ。

 また、教授は「HRテクノロジーは、採用や人材管理のあり方など、“人事業務を根本から変えるもの”であり、その導入を検討する過程で、企業は人材とどのような関係を構築したいのかを見直す必要がある」と強調した。

 他方の人事パーソンたちは、すでに「人事を変える」ためのツールとして、HRテクノロジーを捉えていた。当然ながら、彼らはデータを駆使して既存の人事業務を効率化することに長けているが、それ以上に、「全ての働く個人を幸せにするためのツールとしてのHRテクノロジー」という考え方を持っていたのである。

「HRテクノロジーの活用を通じて目指すものは何ですか」と問うたところ、彼らが口にしたのは「全ての社員が、毎日元気に出社して、生き生き働いてくれるようにすること」。つまり、個のパフォーマンスの最大化こそがHRテクノロジーの目的だというのだ。

 そして、彼らがHRテクノロジーで実現したいもう1つのテーマが、多様な個のコラボレーションによる「イノベーティブな職場をつくる」ことだった。

HRテクノロジーによって、多様な「個」を解放する

「今は、会社がまだ気づいていない個人の強みを明らかにすることに注力しているが、今後は、本人が気づいていない特性や強みまで明らかにしたい」

「自己アピールが下手な人でも、活躍できるフィールドを見つけてあげたい」