(英エコノミスト誌 2018年2月17日号)

韓国大統領、南北首脳会談「急ぎ過ぎ」

韓国首都ソウルでの会談に際し、北朝鮮の金正恩労働党委員長からの親書を文在寅韓国大統領に渡す金委員長の妹、金与正氏(2018年2月10日撮影)。(c)AFP PHOTO / YONHAP 〔AFPBB News

根底にある危機はほとんど変わらない。

 この変化について考えるときには、自分の頬をつねってみなければなるまい。つい3カ月前まで、朝鮮半島には危機が目前に迫っているように思われた。

 金正恩(キム・ジョンウン)氏が近くの海に弾道ミサイルを何発も撃ち込み、6回目の核実験まで行っていたことから、ドナルド・トランプ米大統領に仕えるタカ派の側近たちは、北朝鮮に「ブラディ・ノーズ(鼻血)」と称した先制攻撃を行うようせっついているようだった。

 そうすれば金氏の核武装の野望を打ち砕くことができるとの触れ込みだったが、実際には朝鮮半島をぞっとするような紛争に陥れる可能性の方が高いだろう。

 それがどうだ。北朝鮮を支配する金一族の一員が、1953年の朝鮮戦争休戦以降初の韓国訪問を実行した。

 金正恩氏の実妹である金与正(キム・ヨジョン)氏が、北朝鮮のチアリーダーたち(韓国のメディアは「美女軍団」と呼んでいる)の応援とともに、平昌(ピョンチャン)冬季オリンピックの開会式で一身に注目を集める様子を、韓国とそのほかの西側諸国のメディアが固唾をのんで見つめ、報じている。

 金氏の魅惑的だが上品ないでたち、控えめな笑顔、同行した90歳の金永南(キム・ヨンナム)氏――名ばかりの国家主席だ――に見せたいじらしい敬意などがすべて、惚れ惚れするような人気取り作戦の証拠として格好の取材対象になったのだ。

 「平壌(ピョンヤン)のプリンセス」は、外部からはうかがい知れない体制に人間らしさを装わせるのに大いに貢献した。まさに北朝鮮専属のイバンカ・トランプだった。