「遺伝子組換えでない」と言える混入率は何%まで?

「遺伝子組換え表示」改革を巡る消費者と生産者のせめぎ合い

2018.02.23(Fri) 佐々 義子
筆者プロフィール&コラム概要

見直しの背景に「遺伝子組換えでない」原料の調達困難も

 今回の検討に臨み、消費者団体は少しでも多くの情報を表示してほしいと主張し、事業者はコストなどを鑑みて実行可能性を配慮してほしいと主張してきた。主な論点は、消費者団体側から見て、以下のとおり。

(1)義務表示の対象となる食品を増やしてほしい。
(2)意図しない混入率を5パーセントより引き下げてほしい。

 では、見直し検討の背景はどういったものか。

 まず、遺伝子組換えでない原料の調達が難しくなってきたことがある*1。表示が開始された2001年には5260万ヘクタールだった世界の遺伝子組換え作物(トウモロコシ、ダイズ、ナタネ、ワタなど)の栽培面積は、2016年には1億8510万ヘクタールと約3.5倍になった。

 それに、遺伝子組換えのチェック機能が高まったこともある。検知技術が向上して、組み込まれたDNAとそのDNAによって作られるタンパク質を最終製品においてチェックできる機能が高まったのだ。

*1:「ISAAA Brief 52: Global Status of Commercialized Biotech/GM Crops: 2016」をもとにバイテク情報普及会とりまとめ(https://cbijapan.com/about_use/cultivation_situation/

現状ではすでに遺伝子組換え作物に支えられている

 食品表示法に違反すると罰則がある。そこで、最終製品において遺伝子を組み換えた事実が科学的に検証できるものが、義務表示の対象となっている。下の表は義務表示の対象品目と食品群だ。

 これを見ると、製造過程で導入されたDNAなどが取り除かれたり、分解したりする食用油(とうもろこし、大豆、菜種、綿)やしょうゆ、とうもろこしデンプンからつくる甘み成分などは、最も利用されているのに表示対象外で消費者は利用の実態に気づきにくい。また、日本で最も多く消費されている遺伝子組換え作物は家畜の飼料であり、これも消費者には見えない。

表示義務の対象となっている8作物、33食品群(消費者庁「食品表示に関する共通Q&A(第3集:遺伝子組換え食品に関する表示について)」を参照に作成)
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(さっさ・よしこ) NPO法人 くらしとバイオプラザ21 常務理事。博士(生物科学)。NPOでは、バイオテクノロジーと人々の暮らしを切り口にしたサイエンスコミュニケーションの実践と研究を行っている。ことに「バイオ」に特化したサイエンスカフェ「バイオカフェ」を企画、実施してきた。神奈川工科大学客員教授。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。


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