上野動物園「シャンシャン」、一般公開始まる

東京の上野動物園で一般公開されるジャイアントパンダのシャンシャン(2017年12月19日撮影)。(c)AFP PHOTO / POOL / TORU YAMANAKA〔AFPBB News

 5年前に日中両国が国交正常化および平和友好条約締結を祝うために計画していた諸々の記念行事―その中には将来、日中の架け橋になる青少年たちの夢を乗せた交流行事もあった―の多くが中国側の一方的な都合で中止や延期に追い込まれた。

 日本が尖閣諸島を国有化(2012年)した直後ではあったが、その大きな要因は海保の巡視船に中国漁船が追突した事案(2010年)や尖閣周辺に中国漁船1000隻が押し寄せたこと(2011年)などであった。

 こうした事象を乗り越えて、お互いの友好を確認しようと双方が話し合いで進めた記念行事であったはずである。

 いま思い出すだけでも腸が煮えくりかえり、反吐が出るような気分になる。その余韻というか、凍りついた緊張は昨年夏頃まで続いていた。ところが、それが嘘であったかのように、いま中国が微笑外交に転じたのである。

 就任早々の河野太郎外相も中国に厳しい物言いをしていたが、最近の訪中で撮った中国外交部の華春瑩報道官との2ショット写真はあたかも籠絡されたかのようで、今後いろいろな場面で利用されよう。

 微笑外交への転換要因はいくつか考えられるが、日中国交正常化45周年(2017年)と日中平和友好条約締結40周年(2018年)を前にした昨年10月の第19回党大会で習近平氏が権力を固め、余裕が出てきたことが最も大きいであろう。

 また、「中華民族の偉大な復興」を掲げで進めている「一帯一路」やAIIB(アジアインフラ投資銀行)が信用問題などから思うように進捗していないとも言われ、日本懐柔を目論んでいることも考えられる。

 中国側の巧妙な外交戦略と言えばそれまでであるが、手のひらを返すように困ったときの日本頼み、他方では反日や歴史戦を展開しながら日本を利用するという虫のいいもので、これまで何回も繰り返してきた手法である。

 以上は政治的要因であるが、もう1つ疎かにできないのが上野動物園で生まれたシャンシャン(香香)の存在である。

 メディアは動物園が発表するたびに報道し、愛くるしい仕草に国民はメロメロになってきた。しかし、応募して絞り込まれた名前も、最終的には中国に伺いを立てなければ決められなかった。そこにパンダ外交と言われるゆえんがある。