ゼネコンや設計事務所などで勤務し、建築の専門性を高めた後で協力隊を志したのは、「海外で働きたかったから」。

 現地では、市役所の公共事業課に配属され、地元の小学校の改修工事やフットサルコートの鉄骨屋根の建設、堤防の建設などを行っていた。

 資料やデータがないのは当たり前。まずは現場を計測し、可能な限りスケッチを描き、修理すべき箇所を決めて見積もりを出す、というボリビアでの仕事の進め方は、今の調査と基本的には同じだ。

 「現場の調査を行う際は、限られた時間と過酷な環境の中で、どれだけ情報を見つけて入手するかがカギを握ることを、協力隊時代に学びました」

 今回の調査を通じてMR側に提案している駅舎の改良は、前述のような老朽化対策にとどまらない。

 このほかにも、例えばプラットホームに照明をつけたり、駅名の表示板や構内のサインボードを分かりやすく掲示したり、スタッフ用の仮眠室や更衣室を整備したりすることから、車椅子の利用者でもスムーズに駅舎に入れるようにスロープを設置したり、駅前広場を開発したりするといったことも、併せて提案内容に入れているのだ。

 「建物を直すだけでなく、“安全”や“快適”、“バリアフリー”、“ジェンダーフリー”の視点を持ち込むことで、駅自体に付加価値をつけたいのです」

 温和でおだやかな古澤さんの口調が、この時、一瞬、熱を帯びた。

分断された街を「つなぐ」

駅舎の床に入った大きなクラックは、地盤が沈んでいる証拠だ

 今回の調査で、駅舎の改良の一環として提案されたことの中に、もう1つ、ユニークな内容があった。線路によって分断された街の東側と西側を駅によってつなごうという構想だ。

 対象となっているのは、ミョウハウン駅。第2の都市マンダレーから数キロという立地ゆえ、駅の西側は古くから市街地として栄えてきたが、かつて空港が置かれていた東側は、空港が廃止された今もなお、貨物線が走っている以外、土地は有効活用されていない。

 そこでJICAは2016年、マンダレーの将来的な青写真となるマスタープランを策定する中で、このミョウハウン駅の東側を新商業地区として開発することを盛り込んだ。