2006年に「学術創成のためのネットワーク型知識基盤」事業は終了し、東大内にはそれなりのデータベースができました。

 しかしグーグルが「マップ」や「アース」で切り開いた大きなマーケットやネットワーク社会と比較することなどできるわけもありません。

 別段、最初から競争などしているわけではないので「勝ち」も「負け」もありませんが、顧客ニーズと向き合うことをどれほどしてきたか、という一点では、日本の高等学術は全くスタートラインについていない。

 私は理学系物理という、その意味では全く顧客無視の最右翼が出身母体ですから、この発想は実によく分かるというか、自分自身、そういう根をハッキリ持っています。

 と同時に、20代から音楽現場でどぶ板の生活で叩き上げられた社会経験から、別の観点すなわち「顧客中心主義」のギリギリの線も、中途半端な連中よりはよほど叩き込まれてきた面があると思います。

 この、自分の内なる両者の間の垣根の高さ、あるいは相互の死角をシリコンバレーでの議論では、非常に強く感じました。

 今回は紙幅が尽きましたので、別途続きの議論をしたいと思いますが、最後に、とりわけ若い読者、学生の皆さんに、1つ記しておきたいのは「所属」を持たない弱い立場で社会と向き合う経験をしてみるとよいのでは、ということです。

 シリコンバレーでは、大学生、大学院生にとって一番手堅いキャリアパスは「ベンチャー起業してみる」ことという話がありました。

 もっと言えば、それで失敗してみるということです。チャレンジと苦闘(と、なんなら失敗)の一通りの経験を、学生時代に積むところから出発すれば、その先のキャリアビルディングに一番力になるというわけです。

 いつも一流大学、一流企業、名刺や肩書き、後ろ盾が常にあると、どうも人間は女衒か幇間(たいこもち)のような振る舞いに近づきやすい。

 裸でトライしてニベもない酷い目に遭う、修羅場経験のようなものを積んだ人が、後々大きなチャレンジをモノにしています。

 学歴社会などトイレの水に流して、自身の足で歩かれる若者が増えていかなければ、この先の日本沈没は避けることができないでしょう。