はなはだ疑問なケースが存在したように思いますし、初期に導入された「e-ラーニングシステム」の中には、およそ活用されることなくにお蔵入りとなったものも、決して少なくないのではないでしょうか。当時を振り返っての、率直な感想です。

「ネットワーク型知識基盤」のケース

 2000年、私が東大に着任した直後、工学部長だった小宮山宏教授を中心とする「知識構造化プロジェクト」というものに、メンバーの1人として加えていただきました。

 また並行して、新しいTLO「株式会社東大総研」の創設にも声をかけていただき、役員としてコミットさせていただくことになりました。

 東大総研はIBMとご縁が深く、同社関係者を通じて、ゲノム解析の自然言語処理技術が今後のカギになることなどを知りました。

 そこで「知識構造化」プロジェクトにも自然言語処理の導入がかぎになるだろうと考え、当時は理学部情報科学科におられた辻井潤一さんに参加していただき、世界トップ水準の技術陣が揃って「ネットワーク型知識基盤」を創出する5年5億円のプロジェクトが2001年にスタートしました。

 この審査は、当時の工学部評議員、松本洋一郎さんと大垣眞一郎さんのお2人にご一緒していただきつつ、もっぱら私が質疑にお答えし、良い経験をさせていただきました。

 真ん中にドンと構える江崎玲於奈氏はほとんどものは言わず、経済学の竹内啓さんからは「そんなもの意味はない!」的な攻撃を受けて必死にディフェンス、国際政治学の薬師寺泰蔵氏に「米国の一番新しい潮流の先を行くもの」と助け舟を出していただいたのは、いまでも本当に心から感謝しています。

 ともあれ、何とか審査を通って、この大型プロジェクトが動き出した当時、いまだグーグルはほとんど売り上げが立たず、ネットワークビジネスは、これから言語処理が大活躍という夜明け前の時期でした。

 しかし、東京大学知識構造化プロジェクトから何らかの産業が生まれたり、発展するということは、ついぞありませんでした。

 そもそも、そういうことを企図していなかった、というのが、1つにはあります。