中性子星どうしが衝突・合体する様子のイメージ図。鉄より重い元素は、中性子星の衝突・合体によって生成された可能性がある。 Image by University of Warwick/Mark Garlick, under CC BY 4.0.

 世間では、受験も最終フェーズに突入です。2018年1月13~14日には、恒例・大学入試センター試験が行われました。その問題が難問だとか悪問だとか、あれこれ批評されるのもまた恒例です。問題作成関係者は大変気を配って作成しますが、褒められることは滅多にありません。

 今年度は「地学 第6問 A」が天文・宇宙物理の業界に波紋を広げました。天文・宇宙物理研究者にとって、いったいその問題のどこが「問題」だったのでしょうか。

 実はその問題、2017年8月17日12時41分04秒(協定世界時)までは、全く「問題」なかったのですが、この時刻に地球に到来した重力波が、元素についての人類の知識を変えてしまったのです。その結果、「地学 第6問 A」は時代遅れになってしまいました。

 今回は、その地学第6問Aを受験生に代わって解いてみましょう。

宇宙の元素はどうやってできた?

A 宇宙の構成要素に関する次の文章を読み、下の問い(問1・問2)に答えよ。

 宇宙は、恒星や星間物質など電磁波で直接観測できる物質(通常の物質)のほか、直接には観測できない構成要素(ダークマター、ダークエネルギー)からなると考えられている。(a)通常の物質は、水素とヘリウム、それ以外の重い元素から構成されている

問1 上の文章中の下線部(a)に関連して、宇宙の元素について述べた文として最も適当なものを、次の(1)〜(4)のうちから一つ選べ。

(1)炭素、酸素の一部はビッグバンによりつくられた。
(2)超新星爆発によって、鉄より重い元素がつくられた。
(3)種族IIの星は、種族Iの星にくらべて重い元素の割合が多い。
(4)ヘリウムの大部分は、恒星内部の核融合によりつくられた。

【平成30年度大学入試センター試験 地学 第6問 A。問2は省略】
 

 これは、元素の起源についての知識を問う問題です。ダークマターやダークエネルギーなど、キラキラ宇宙用語が並んでいますが、これは目眩ましで、問題を解くために全く必要ありません。よく訓練された受験生は惑わされずに下線部(a)に取り組みます。