湯浅醤油では今や日本でも稀有な杉樽で醤油を仕込む(写真提供:湯浅醤油、以下同)

「和食」の世界的ブームは今さら言うまでもないが、ブームは新たなフェーズに進みつつある。近年は、欧米など現地一流シェフたちの造詣の深化を通じて、たとえば「フランス料理に和食の調味料を活用する」ケースが増えているという。

 世界中の美食家たちが「フランスよりも美味しいフランス料理が食べられる」と高く評価する国、ベルギー。同国のミシュラン星付レストランのシェフたちの間では、今、日本のある醤油職人が熱い注目を集めている。料理に“彼の醤油”を加えることで、美食家たちの想像を超えた味の世界が現出するという。伝統に立脚しつつも世界を驚嘆させる“革命的醤油”の作り手とはどんな人物なのか? 彼はどうやってそれを実現したのか?

醤油発祥の地で挑む「世界一」の醤油作り

湯浅醤油の新古敏朗社長

 その醤油職人とは、新古敏朗(しんこ・としお)氏(48)。日本における醤油発祥の地、和歌山県有田郡湯浅町(人口約1万1700人)で1881年に創業した調味料製造会社「丸新本家」の5代目当主だ。

 彼が代表取締役を務める湯浅醤油有限会社は、醤油の新たな可能性を追求するために、2002年に丸新本家から醤油部門を分離独立させた戦略子会社である。資本金300万円、従業員12名の小世帯ながら、年商は対前年度比200%の右肩上がりを続け、今や2億900万円。主要取引先には、第一阪急ホテルズ、ロイヤルホテル、理研化学商事、国分、日本アクセスをはじめとする企業群が並ぶ。