似て非なるものだったらしい戦前のロールキャベツ

「栄養と料理カード」でたどる昭和レシピ(4)ロールキャベツ

2018.01.26(Fri) 三保谷 智子
筆者プロフィール&コラム概要

 落しぶたには、火の回りがよくして一様に柔らかく煮る、ロールキャベツが鍋の中で踊らないようにして煮くずれを防ぐ役割がある。

 前書きで「栄養と料理カード」の真髄が語られていた。要約すると、目分量と手加減で作る料理は、モノサシなしの裁縫と同じで、料理を充分に会得するには失敗とムダが伴う。それは料理に数学の公式や洋裁の原型(型紙)がないからである。この「栄養と料理カード」はひとつの料理をあらゆる面から割り出した型紙であり、この型紙を用いればいつでも、どこでも、だれにも必ず一定の美味な料理が作れると、自信をもって薦めている。

 では、その「栄養と料理カード」のほうも見てみよう。

ひき肉と副材料はすり鉢ですり混ぜる――昭和29年

『栄養と料理』1954(昭和29)年6月号。右下にある広告も興味深い。
拡大画像表示

 表面には材料やコツのほかに、材料の応用や器具も明記されている。たしかに道具は「すり鉢、すりこ木」。今では肉だねはボールで混ぜ合わせる。すり鉢は多くの台所から姿を消してしまった調理道具の1つだが、ごまあえや白あえなどのあえ物を作るときや、魚のすり身を作るときなどに活用していた。すり混ぜて口当たりをよくするという機能はすり鉢でこそ。ミキサーやフードプロセッサーでは不十分である。

 材料は、1人分ロールキャベツ2個、1個はキャベツ2枚使うからキャベツ4枚で200~250gにもなる。この1品で1日分の野菜の必要量の半分以上がとれる。

 戦前のレシピと比べると、肉の80%も入れていたパンの分量が15%に減る、食パンの耳を除いて水ではなく牛乳に浸す、肉だねにはナツメグが入る(この頃には香辛料も手に入りやすくなったのだろう)、煮汁はスープ(湯とグルタミン酸ソーダ)とトマトソースを使う、最後に煮汁を水どき小麦粉を加えてとろみをつける、などが異なる。

 グルタミン酸ソーダとはいわゆる「味の素」を指すのだろう。長く使われ、『栄養と料理』誌上でも何回もレシピに登場していた。

 ゆでたキャベツの下味は塩分1%、肉だねは塩分1.5%、つなぎは肉の20%、煮汁の量は材料の高さの半分でよい、煮汁に対して3%の小麦粉でとろみをつける、など作る分量(人数分)が異なっても対応できるように割合で示してある。

この連載記事のバックナンバー
トップページへ戻る

三保谷智子(みほやともこ)

栄養と料理』元編集長。2011年4月から香川昇三・綾記念展示室勤務。学芸員。

東京都出身。1977年立教大学文学部史学科卒業後、香川栄養専門学校栄養士科(現 香川調理製菓専門学校)へ進学、「栄養士」の資格を取得。その後、1979年女子栄養大学出版部雑誌編集課に入職、約30年『栄養と料理』の編集に携わる。1988年より2011年まで、10年間編集長を務める。途中、同部マーケティング課、書籍編集課に在席。

独立行政法人国立健康・栄養研究所外部評価委員。「食生活ジャーナリストの会」会員、NPO法人「野菜と文化のフォーラム」会員、NPO法人「くらしとバイオプラザ21」理事。現在、『栄養と料理』で連載「レシピの変遷シリーズ」を執筆中。


食の万華鏡

食の安全に対して国民の関心が高まっている。今後、安全で美味しい食の供給国としての日本を考えた時にもこの問題は重要になる。食の安全の話題を中心に、食トレンド、食品マーケットなど、食にまつわる様々なテーマを取り上げる。