似て非なるものだったらしい戦前のロールキャベツ

「栄養と料理カード」でたどる昭和レシピ(4)ロールキャベツ

2018.01.26(Fri) 三保谷 智子
筆者プロフィール&コラム概要

肉はキャベツをおいしくするための味だし――昭和13年

『栄養と料理』1938(昭和13)年12月号の表紙と「お臺所讀本(おだいどころどくほん)」で紹介された「ロールキャベツ」。「瓦」はg(グラム)。「鹽」は塩のこと。
拡大画像表示

『栄養と料理』を創刊した香川綾(医師・栄養学者)は料理記事も執筆した。医学や栄養学の理論を日々の暮らしで実践することで、人々の栄養改善ができるという信念を持っていた。料理を科学の視点でとらえ、誰にでも合理的な作り方でおいしい味が再現できる方法を数量化して発表した。1938(昭和13)年12月号の記事「お䑓所讀本」にある「ロールキャベツ」もその1つ。

 作り方は現在と変わらないが、キャベツ丸ごと1個に対してひき肉(牛・豚)は250gと少なく、肉のつなぎになるパン粉は、パン屑の表記で半斤(約200g)と多い。パンは肉だねのボリュームを保ち、柔らかくふんわり仕上げる役割。肉は味だしのための存在で、当時のロールキャベツは、肉料理というよりは野菜料理といえる。

 また、野菜の食べ方についての解説も興味深い。当時の日本人は、菜っ葉を煮るとき歯触りを大切にして煮すぎないようにしていると指摘して、「ロールキャベツがスプスプに柔かくなるまで煮込んだ方が美味しうございます。(略)お箸で楽に挟み切れる位の柔かさに煮上げて、御飯のお菜に向く様に作りましたなら、キャベツはもっともっと皆様の食卓に親しいものとなるのではないかと思ひます」と続ける。

 読者に、野菜の煮込み料理にもキャベツにもっと親しんで、おいしさを味わってほしいと勧めている。

1人分で牛ひき肉50gにパン粉40gも――昭和16年

1941(昭和16)年9月号の表紙と「栄養と料理カード」。
拡大画像表示

「栄養と料理カード」の中からは、ロールキャベツを3枚見つけた。

 1941(昭和16)年9月号のロールキャベツは、キャベツとひき肉(牛)、パン屑、玉ねぎの分量も前述の「お䑓所讀本」とほぼ同様で、5人分としている。パン屑は水に浸して柔らかくし、水気を切ってからひき肉と玉ねぎを混ぜ合わせ、5つに丸める。

 キャベツは大小2枚を組み合わせ、塩(キャベツの1%)とこしょうで下味をする。肉だねを手前に置き、手前から向こうに巻き、途中で一端を折り、最後に他方の端を肉だねに押し込むようにして俵形に整え、固く巻く。

この連載記事のバックナンバー
トップページへ戻る

三保谷智子(みほやともこ)

栄養と料理』元編集長。2011年4月から香川昇三・綾記念展示室勤務。学芸員。

東京都出身。1977年立教大学文学部史学科卒業後、香川栄養専門学校栄養士科(現 香川調理製菓専門学校)へ進学、「栄養士」の資格を取得。その後、1979年女子栄養大学出版部雑誌編集課に入職、約30年『栄養と料理』の編集に携わる。1988年より2011年まで、10年間編集長を務める。途中、同部マーケティング課、書籍編集課に在席。

独立行政法人国立健康・栄養研究所外部評価委員。「食生活ジャーナリストの会」会員、NPO法人「野菜と文化のフォーラム」会員、NPO法人「くらしとバイオプラザ21」理事。現在、『栄養と料理』で連載「レシピの変遷シリーズ」を執筆中。


食の万華鏡

食の安全に対して国民の関心が高まっている。今後、安全で美味しい食の供給国としての日本を考えた時にもこの問題は重要になる。食の安全の話題を中心に、食トレンド、食品マーケットなど、食にまつわる様々なテーマを取り上げる。