ビジネスに追いつけない日本のシステム開発の構造欠陥

経営者のための「DX時代のイノベーション戦略」(第3回)

平鍋 健児/2018.1.12

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 このように日本では圧倒的に提供側のIT人材が多い。これは欧米に比べると顕著な傾向である(筆者がかつて携わった同様の調査でもほぼ同じ結果だし、業界の中での「実感」としても強く認識してきた)。

 この理由にはいくつかあるが、筆者は日本の特殊性として以下の要因が大きいと考えている。

(1)日本発で製品市場に通用するプロダクトが少なく、国内ユーザー企業なしに国内IT企業が成り立たないこと。

(2)1980年代にユーザー企業が情報システム部門を分離子会社化し、給与体系と役割を本社と分け始めたたこと。

(3)新卒採用から1社で勤め上げることをよしとする終身雇用の習慣が浸透しており、解雇が規制されているため、人材の流動性が低いこと。

 米国は、マイクロソフトやアップル、オラクルが誕生した1970年代から(さらにその前のIBM、DEC、HP時代から)、世界市場にOSや基盤ソフトウエアを提供し続けている(日本もこの時代は強かった)。

 さらに90年以降はグーグル、アマゾン、フェイスブック、ツイッター、セールスフォース、アマゾンなどWebサービスとしてソフトウエアプラットフォームを提供する企業が大成長を遂げる。そして、2000年代後半に、ドロップボックス(2007)、ウーバー(2009)、エアビーアンドビー(2008)、ピンタレスト(2010)などのユニコーン(時価総額10億ドルベンチャー)が登場する。彼らの会社の従業員は、ほとんどがソフトウエアエンジニアやデザイナーだ。90年代のこの時代に、世界市場で成功する「ソフトウエアをコアとしたプロダクト」が日本から出てこなかったというのが、この構造を決定づけたのかもしれない。

 一方で海外では、金融のような老舗の産業でさえソフトウエア人材を内部で大切にしている。たとえばゴールドマン・サックスでは社員の中のエンジニア比率が25%であるという。ITを自身の強みの中核として認識し、採用、インソースしていることの表れであり、日本の金融機関ではありえない数字だと思う。

 日本の1980年代の様々な産業における「システム子会社化」は自然な流れだったのだろうか。ちなみに筆者の前職はNKエクサ(IBMに買収されて現在はエクサ)である。大学を出てNKK(日本鋼管、現JFE)に入社し、途中でシステム子会社のNKエクサへ出向した。日本にこうしたシステム子会社がある背景には、ITシステムは「外部から調達するもの」だという発想がある。また、ITを開発する能力は企業にとってコアコンピタンスではなく、別の組織(会社)として運営すべきだ、という考え方に基づいていたと推察する。ITはあくまでも製造物であり、仕様を提供して、入札・応札を行い、同じ仕様で最も品質がよく、安くいいものを調達する、すなわちソフトウエアを「工業製品化」する、という思想がそこにある。