役職と「偉さ」を切り離す

 ところ近年、職場では年功序列が少しずつ崩れるにつれ、中高年の承認欲求が十分に満たされないケースが増えてきた。その典型が、部下よりも上司の年齢が若いという逆転現象である。欧米ならドライに割り切れるだろうが、「長幼の序」の文化が残るわが国では上司からすると年長の部下を扱いにくいし、部下はやる気を失うという事例がしばしば発生している。

 問題は上司のほうが部下よりも「偉い」という暗黙の前提にある。年功序列を見直す際には、この「偉さ」と職位とを切り離す必要がある。上司と部下は単に役割の違いであり、「偉さ」とは無関係であるという割り切ったマネジメントを徹底させなければならない。

 そして口の利き方から仕事を離れたつきあいまで、「偉さ」の序列を前提にした旧来の慣習はあらためる必要がある。たとえ地位は低くても、年長者を敬う態度を捨ててはいけない。

 また、とりわけ役職に就いていない年配者には、自分が会社のために役立っていないのではないか、報酬に見合った貢献ができていないのではないか、という負い目を持っている人が少なくない。成果主義で若年層の年配者を見る目が厳しくなってからはなおさらである。

 そこで効果的なのは特定の領域や仕事を任せることである。ただし、その範囲や仕事の重要性は、当人の能力に見合ったものでなければならない。また本人だけでなく周囲にも会社にとって欠かせない人であると周知させることが大切だ。