次に、そうやって選んだAとBと、その和Cを、掛け合わせ、素因数分解します。

A×B×C=4×15×19=22×3×5×19

 さらに、素因数分解の結果から、異なる素因数だけを拾って掛け合わせて、新たな数Dを作ります。つまりべき乗は1乗に変えます。

22×3×5×19 → 2×3×5×19=570=D

 DはA×B×Cの「根基」と呼ばれますが、やはり覚えなくても差し支えありません。

 この時、「たいていの場合、DはCよりも大きくなるだろう」というのがABC予想です。

「たいていの場合」というのをもっと厳密に表現すると、

「ある正の実数εについて、 C>D1+ε を満たすCは有限個しか存在しないだろう」

となります。

 これで一応、あまり難しい数学用語は使わずに、ABC予想を説明してみました。

 ABC予想は、言い換えると、

互いに素な整数AとBを足して A+B=C を作ると、Cには、AにもBにも含まれない新しい素因数がいくつも含まれるだろう。そういう場合はたいてい、C<D が成り立つ

という予想です。

ABC予想のすごい威力

 ABC予想は実用的な役には立ちませんが、「整数論」という数学分野で重要な役割を果たします。この予想が成り立つと、いくつもの定理が証明できます。

 例えば、「フェルマーの最終定理」はその一つです。