アイデアから具体的な製品やサービスを形作り、新たなビジネスにチャレンジしてみよう。そんな意欲を持つ「起業家人材」は、既存企業が新規事業を立ち上げる際にも役立つはずだ。

海外の大学では定着しているアントレプレナーシップ教育

 海外では大学教育の現場に、起業家精神を養うアントレプレナーシップ教育が定着している。

 日本での知名度が高い大学を例に挙げるならば、米スタンフォード大学や米マサチューセッツ工科大学(MIT)がある。スタンフォード大は、製品やサービスを創出する方法論として日本企業の間でも注目度が高まりつつある「デザイン思考」のカリキュラム「d.school」を展開。MITは60種類超のコースからなる「Martin Trust Center」を運営し、起業家を志す学生を教育面で支えている。バブソン大学やメリーランド大学のように、ほぼ全学を挙げてアントレプレナーシップ教育に力を注いできた大学もある。

 欧州に目を向けると、例えばスウェーデンのチャルマース工科大学,ルンド大学,フィンランドのアールト大学などがアントレプレナーシップ教育に熱心なことで知られており、、起業家人材の育成に取り組む海外大学の例には事欠かない。

 ひるがえって、日本はどうだろう。アントレプレナーシップ教育が身近な欧米に比べると、体系立てたカリキュラムは必ずしも十分に整っていなかった。残念ながら、若い人材の起業意欲を醸成したり、知見を体得させたりする点で、これまで欧米に後れを取ってきたと言わざるを得ない。

起業家人材は教育によって育成できる

 そもそも、イノベーションの担い手となる起業家人材を、教育によって本当に育てられるのか。アントレプレナーシップ教育の実効性を疑問視する人がいるかもしれない。結論から先に言えば、できる。

 文部科学省の「グローバルアントレプレナー育成促進事業」として2014年度にスタートしたWASEDA-EDGEの受講者数は年々増え続け、2016年度までの3年間で延べ2000人を超えた。その中から10件程度の起業事例が、これまでに生まれている。