2018年の原油動向、鍵を握るのはサウジアラビア

戦後最大の石油危機勃発のリスクに備えよ

2017.12.22(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51917
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 中国汽車工業協会によれば、2017年11月までの新エネルギー車(電気自動車の割合が約9割)の販売台数は約61万台を超え(前年比51%増)、来年は100万台を超えると予想されている。活況を呈してきた道路や橋、地下鉄建設などのインフラ投資も、政府の債務抑制策の影響から大幅に減速すると予測されている(12月5日付ブルームバーグ)。輸送用、産業用共に需要の伸びが鈍化すると見込まれる中、茶壺が一人気を吐いても、中国の原油輸入量は来年半ばまでには減少に転ずるのではないだろうか。そうなれば、原油価格は1バレル=40ドル台に下落する可能性がある。

 下期の原油価格については、主要産油国の間で「減産破り」の動きが顕著となり、協調減産の期限が近づく年末に向けて下押し圧力がさらにかかることから、1バレル=40ドル台で推移するだろう(40ドル割れの可能性もある)。

性急すぎるムハンマド皇太子の改革

 以上が需給面からの見立てだが、来年の原油価格に最も影響を与えるのは、中東地域の地政学リスクではないだろうか。

 筆者はサルマン国王就任直後から懸念を有していたが、日本でも最近になってサウジアラビアの行く末を危ぶむ声が高まっている。最大の波乱要素がムハンマド皇太子(32歳)であることは言うまでもない。

 ムハンマド皇太子は、2015年1月に国防大臣や経済開発評議会議長に就任し、軍事や経済制策で実権を得た後、同年4月に副皇太子、今年6月に皇太子に昇格した。

 ムハンマド皇太子は、石油依存型経済から脱却するため昨年4月に「ビジョン2030」を発表し、建国以来最大の大改革を実施しようとしている。しかし、内外の不安定要素が急速な勢いで増大している。「石油の時代」の終わりが現実味を帯びつつある昨今、石油依存型経済からの脱却を図るのは正しい方針だろう。だが、明治維新にも匹敵するほどの大改革を一挙に進めようとするのはいかがなものだろうか。サウジアラビア流のこれまでの統治は、問題が生ずれば「ラクダの歩み」のように極めて緩慢なペースで対応するというやり方だった。これに対し「時間がない」と焦るムハンマド皇太子は自らに権力を集中させ、性急に改革を進めようとしてきた。今や高齢のサルマン国王に代わり国の全権を掌握し、「ミスターエブリシング」とも言われている。だが今年11月に汚職容疑で大勢の王子などを強権的なやり方で逮捕したことでサウド家全体の王族を敵に回してしまった可能性が高い。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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