独りで学会のブースに立ち、2万円の腹腔鏡手術トレーニングボックスや、カメラモニターをつけた6万~8万円程度のセット品などを展示した。それが4年前に福岡で開催された日本内視鏡外科学会総会で、同社に大きなターニングポイントをもたらした。
医師からは「数十万円するものが、なぜこんなに安く手に入るんだ」という感想が目立ったという。
会話ができたのは興味を持ってブースに立ち寄ってくれた医師だけだったが、それでも医師の人だかりはできていた。結果として、この学会に出展した月の売り上げは約10倍近くの跳ね上がりを見せた。
「売り上げが上がったことも大きいですが、多くの医師と話ができたことが自信につながりました。自社製品が受け入れられる喜びを肌で感じました」と、高山さん。
試作品を2週間以内に医師のもとへ
福岡での展示会で、次の製品開発につながる医師との出会いがあった。
高山さんのブースに、似たような手術訓練セットを自作したという医師が立ち寄った。医師が自ら考えて開発支援を求めて、医療機器メーカーに持ち込んできたが、どこも取り合ってくれなかったという。
高山さんは、その医師の試作品を自社のブースに参考品として展示してもらい、製品化をその場で約束し、展示会終了後、試作に取りかかった。高山さんがグッドデザイン賞を受賞したのは、この時に生まれた腹腔鏡手術の訓練セットだった。
「作りは粗いけどコンセプトはいい」と、グッドデザイン賞としては少し微妙な評価だったものの受賞できた。このモデルは1つ3万円で、これまでに600個以上売れており、同社の主力商品の1つとなった。
学会への出展が次の商品開発につながり、腹腔鏡手術トレーニングボックス以外の手術練習用品へも広がり、1つ3000~5000円程度の安価な縫合練習用パッドなどを開発した。
同社は、いずれの製品も、遅かれ早かれ売り上げが伸び悩む時がくることを見据え、次世代の商品として今年発売に至った、 手術訓練用の模擬臓器へと製品群を拡大した。繰り返し購入してもらえる消耗品を揃えることも高山さんの戦略の1つ。
グッドデザイン賞のほか、これまでに埼玉県主催の渋沢栄一ビジネス大賞特別賞や医療機器等試作品コンテストのアイデア賞など、数々の賞を受賞。これからも医師に受ける製品開発が期待される町工場だ。







