一般的に、医師の手技の訓練には動物の皮膚や臓器、シリコン樹脂などが使われてきたが、植物性食品原料を使うことで、動物特有の匂いや煩雑な廃棄処理からも解放されるというメリットは大きい。
「1回の打ち合わせから、2週間から遅くても1か月以内に医師に試作品を届けてフィードバックをもらうことが大切。また、医療機器は認可が不要な周辺機器がたくさんあるので小さな案件でもチャレンジすることで、最初の一歩を踏み出せる」
町工場だからこその機動力が成功のカギになったと高山さんは言う。
“自社製品”の重要性を認識したリーマンショック
寿技研が医療産業に参入して5年になるのだが、そのきっかけにさかのぼろう。もともと同社の売れ筋はラジコンのタイヤ。1989年に第1次、1997年に第2次のミニ四駆ブームの恩恵を受け、爆発的に売れた。
さいたま市が主催する医工連携講座で登壇する寿技研代表取締役社長の高山成一郎さん
しかし、ミニ四駆のブームが去った直後に社屋が火災に見舞われ、業績はガタ落ち。それでも技術力が評価されていたことが救いとなり、10年かけて徐々に回復基調へと持ち直した。
そこへリーマンショックが襲った。売り上げは火災時よりも下がり、下請けという業態ゆえに、顧客が傾けば自社も傾く構図の厳しさに直面した。
「仕事が減ったから何とか新しい仕事をもらえないかとかけ合っても、『仕事がないんだからしょうがないだろう』と片づけられる。自社製品を持たない下請け専業は、とどのつまりはお客さんに頼る構図。さすがに限界が見えました」と高山さんは当時の苦渋を振り返る。
何とかしなければと思っていた矢先に、高山さんが医療分野に進出するヒントを得たのは、 外資の大手医療機器メーカーで営業をしていた小学校からの幼馴染との会話だった。
「営業先の医師たちが腹腔鏡手術の練習をする道具が高額で、病院では買えても個人ではなかなか手が出ない」という話を聞いた。
腹腔鏡手術とは、おなかを切って開く開腹手術に対し、おへその周りから直径2~12ミリの内視鏡を横隔膜から下の腹部の内部にあたる腹腔内に挿入し、外部のモニター上に映る患部の映像を見ながら行われる手術。
胆嚢や大腸がん、胃がんの摘出、子宮筋腫などの手術で用いられる。おなかを横または縦に10センチ以上切る開腹手術に比べて、1センチ程度の術跡になり、患者の回復の速さや美容面ではメリットがある。






