日常的に「私よりもお客様、顧客企業を優先するように」と口すっぱく伝える社長なら、たとえば部下が社長の機嫌をとろうとして顧客や相手企業を軽んずる行動を取ろうとしたとき、「こら! 私のことなんかどうでもいい! 顧客のこと、相手企業を優先しろ!」と一喝するだろう。もし一喝せずに、黙って機嫌を取り結ぶ部下の行動を黙認したとしたら、それは社長が部下をそのように誘導したことになるのだ。

 部下が保身と出世を考えるのは当たり前だ。保身と出世のために社長の機嫌を取ろうとするのも当然だ。社長が何もしなければ、部下は忖度し、できる限り社長の機嫌を取ろうとする。これは当然のことであり、仕方のないことだ。

会社の発展のために

 会社全体の発展のためには、社長が部下に対して常に言い続けなければならないことがある。「私の機嫌なんかどうでもよい、顧客のため、相手企業のためになることは何か、その上でわれわれの会社がどうしたら発展できるのかを考えなさい」というメッセージだ。

 こうしたメッセージを常に伝え、自分の機嫌をとろうとする部下の行動を常にたしなめるようにすれば、「社長は常に会社の発展のことを望んでいるのだな」と部下たちは「忖度」し、そのための行動を取ろうとする。

 部下が機嫌を取ろうとするのを放置する時点で、社長の顔色ばかり窺うヒラメ社員を増やす素地が出来上がったようなものだ。そうした会社は、社長はご機嫌だが、会社全体は沈んでいく。

 会社を発展させる忖度を誘導できるか、それとも会社を没落させてしまう忖度をそのまま放置してしまうか。

 部下の「忖度」の方向をどう誘導するかは、社長次第、上司次第だといえるだろう。