社長は1時間、近くに時間をつぶせる喫茶店もなく、無為な時間を過ごす羽目になるかもしれないが、相手を真っ先に考えるという姿勢は、会社の発展につながる。

 こう並べてみると、いわゆる「忖度」をしているのは前者の、社長の顔色を窺う部下の方のように思える。しかし実は、後者の、相手先企業を優先している部下も、社長の意向を「忖度」している。というのも、部下は誰もが上司の顔色を窺うものだからだ。

「忖度」の結果の違いはなぜ生まれるのか

 では、社長の顔色をどちらも窺っているのに、つまり「忖度」しているのに、部下の行動は大きく異なり、おそらく、会社の将来も大きく変わってくる。何が違うのだろう?

 それは「社長の姿勢」なのだろう。自分の機嫌を取り結ぶことを好む社長の周辺には、相手先企業よりも社長の気持ちを忖度し、優先する部下が集まるようになる。顧客のためなら、社長の機嫌を損ねることになったとしても直言を憚らないような部下は、煙たがって遠ざけてしまう。

 他方、社長である自分のことより相手先企業や顧客を尊重する姿勢の強い社長は、普段から「私のことなんかどうでもよい、先方はどうお考えなのだ?!」「わが社のことはまず置こう。まずお客様のためにどう動くべきかを考えよう」という発言や行動が、普段から見られるのだろう。だから部下も、社長の好みである「社長自身の気持ちよりも、顧客や相手先企業を優先する」ことを忖度し、選択するのだ。

 もちろん前者の社長も、「私はそんな指示はしていない、部下が勝手にやったことだ、常に顧客、相手先企業を優先するように訓話している」と言い訳するかもしれない。しかし日常で部下に見せる姿勢がそうなっておらず、自分の機嫌をとらない部下がいると腹を立てているのであれば、結局は社長の機嫌を最優先する部下を増やすことになってしまう。