発注者としての成長見守る

 これを受け、適正なプロセスを経て適切な形で施工企業が決まるよう、急きょ、助っ人に入ることになったのが、前出の山岡さん率いる日本人チームだ。

 今年2月上旬に業務を開始した15人は、フルスピードで活動を開始。「工事契約」「品質管理」「技術仕様書」「積算」「工事計画」「軌道・路盤」「排水」「橋梁」「建築施設」「電力」などに分かれ、各分野の入札図書に書くべき内容についてMRの担当者と協議を重ねたり、ドラフトを指導したりした。

 「これまで経験したことのない内容ばかりで、MRの職員はかなり戸惑ったのではないかと思うが、よく勉強してくれた」「土日も返上で熱心に議論し合う彼らの姿を見て嬉しくなった」と、チームを率いた山岡さんは振り返る。

 努力が実って予定通り4月に公告が出され、入札説明会が開かれた後も、奮闘は続いた。

 今回の入札は、技術提案書と価格札の二札方式。5月中旬までメールで質問を受け付けた後、7月上旬にプロポーザルを閉め切り、まず技術提案者を審査し、順位をつけた上で技術審査を通過した企業を呼んで価格札を開札。

ホームに市場が広がるダニンゴン駅(2017年1月撮影)

 一連のプロセスが適切かつ公正に進められるよう、メンバーたちはMRに助言を続けた。

 「適切な仕様で入札図書をつくり、公示をかけて施工業者を選定し、工事契約を締結する。この協力では、このような国際的に共有されているプロセスを学んでもらうと同時に、調達手続きがどういう意味を持つ仕事なのか理解してもらおうと心掛けた」

環状鉄道はヤンゴン市民の足だ(2016年11月撮影)

 さらに、今回の応札条件には、この国ならではの状況を踏まえて日本人チームから提案した条項も、1点盛り込まれていた。アドバイザリー契約を結んだ企業の参加を認めたのだ。

 一般的に、こうした入札の場合、類似業務の経験は選定の上で大きなウエイトを占める。

 しかし、この条項が入ったことにより、これまで必ずしも鉄道土木事業の経験がないミャンマー企業であっても、東南アジア諸国連合(ASEAN)か経済協力開発機構(OECD)加盟国のコンサルティング企業あるいは建設企業から技術的なバックアップを受けられるならばチャレンジの機会が与えられることになったのだ。