試作品は既に神戸市内のオフィスビル作業所で稼働実績がある。すでにこの現場からはTOギャザーを回収したが、「もう1回使わせてくれという声が来るほど、現場からは好評だ」(櫻井豊樹・西日本機材センター機械化施工推進グループ長)という。

 プロトタイプでの検証結果を踏まえ、2018年2月から量産品を販売する計画だ。量産品では作業現場のイメージを向上させるよう、デザインに工夫を凝らした。TOギャザーは竹中工務店と岡谷鋼機の共同開発で、岡谷鋼機が外販をする。販売価格は1台200万円の予定。

資材運搬の負担を大幅に低減

 一方のクローラーTOは、既成の資材運搬用台車の下に潜り込んでジャッキアップし、その台車を運搬する。特徴は「OMNICRAWLER(オムニクローラー)」と言われる移動機構を搭載しており、平面の全方向への移動が可能になっていること。小回りが利くのでエレベーター前などが狭い作業所でも使いやすい。

 クローラーTOは竹中工務店と岡谷鋼機、そしてトピー工業の3社による共同開発で、オムニクローラーはトピー工業が東北大学大学院の研究成果をベースに実用化した技術である。

 運搬可能な重量は500キログラム。走行速度は時速3キロで、人間の歩行速度に近い。乗り越えられる段差は2.5センチで、建設現場などで使用される板の標準的な厚みに準ずる。

 操作はスマートフォンから行う。30分程度の講習で十分に操作できるようになるという。「少子高齢化で人手不足が深刻化する中、高齢者や女性作業者でも揚重・運搬できるようになった。これは現場の仕事に極めて大きなインパクトをもたらす」(永田主任)。

 クローラーTOは2017年12月18日から神戸市内の作業所で実運用が始まった。同時に開発会社の1社である岡谷鋼機からも販売が始まっている。販売価格は200万円。

375キログラムの荷を載せた台車を人手で運んでいる様子。少しでも角度のある坂を登るだけでも一苦労である(提供:竹中工務店、岡谷鋼機、トピー工業)
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同じ375キログラムの荷を載せた台車でも、クローラーTOを使えば運搬が省力化できる。台車の下に入ってからジャッキアップして台車を持ち上げて移動する。操作はスマートフォンから行う。クローラーTOとスマートフォンの間の通信は無線LANを採用している(提供:竹中工務店、岡谷鋼機、トピー工業)
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