陽電子とは何でしょうか。陽電子は、私たちの身近な物質に材料として大量に含まれている電子とそっくりですが、電子はマイナスの電荷を持つのに対し、陽電子の電荷はプラスです。

 このように、質量など他の性質はそっくりなのに、電荷が違う粒子は「反粒子」と呼ばれます。陽電子は電子の反粒子です。「反物質」と呼ばれることもあります。

 雷がどんがらぴっしゃんと落ちる時、実はガンマ線が放射され高速中性子が飛び出し、放射性元素が生成し、反物質までも生じていたのです。

今後は雷を見る目も変わります

 そんな代物が雷雲の中に生じるといっても、いったいどれほどの量でしょうか。

 1回の落雷イベントで、ガンマ線が窒素14の原子核に衝突することによって生じる窒素13と中性子は、それぞれ4×1012個ほどと見積られています。

 窒素13の原子核が4×1012個と言われても、多いんだか少ないんだか判断に困りますが、これは質量に換算すると約1000万分の1g、放射能に換算すると67億Bq(ベクレル)です。(やはり判断に困るでしょうか。)

 今後は稲妻を見たり雷鳴が轟くのを聞いたときには、そこで窒素13と中性子が4×1012個生じていると思ってください。

 そして雷雲はその後10分にわたって、陽電子を放射し続けるのです。もしもガンマ線が目に見えたら、雷雲が陽電子の消滅線でぼうっと光るのが見えるでしょう。

 それにしても、雷雲のような見慣れた身近な物が、このような核反応の舞台となっているとは、意外で驚きです。

 榎戸准教授(当時は学生)から、雷による核反応の話を初めて聞いたときには、ホンマかいなと思ったものですが、こういう見事なデータを見せられると信じるしかありません。

 疑ってどうもすみません。この場を借りてお詫びします。