雷は天然の粒子加速器

 雷が発生すると、電子が高電圧の中で加速されるので、これは一種の「粒子加速器」といえます。

 粒子加速器というのは、小さな粒子を光速近くまで加速して、(その後大抵の場合は)衝突させる実験装置です。

 そういう装置で人類は新しい元素を合成したり、日常存在しない核子や中間子を作ったり、レプトンやクォークやヒッグス粒子といった素粒子を見つけたり、原子核物理学や素粒子物理学の知識を広げてきました。

 そうすると雷がどんがらぴっしゃんやってる時も、そうした人工の装置のように、奇妙な粒子が生成したり消滅したりしているのでしょうか。

 普通に考えると「そんな莫迦な」ですが、「いや意外にやってるかも」という意見が、1990年代に雷雲由来のガンマ線が発見されたことで盛り上がって参りました。

 ガンマ線とは、エネルギーが高くて放射線に分類される電磁波です。

 人工衛星にガンマ線検出器を積んで地表を観測したところ、雷雲の位置からガンマ線がきらめくのが観測されたのです。

 雷という粒子加速器の中で高速に加速された電子がガンマ線を放射することが分かったのです。

GROWTHプロジェクト

 雷がガンマ線を放射すると、どんな反応が大気中で起きるでしょうか。

 この問題を解くため、榎戸特定准教授、東京大学の和田有希氏と古田禄大氏、中澤知洋講師、湯浅孝行博士、日本原子力研究開発機構の土屋晴文研究副主幹、北海道大学佐藤光輝講師らの研究グループは、雷雲を放射線検出器で観測しました。「冬季雷雲ガンマ線観測(Gamma-Ray Observation of Winter Thunderclouds; GROWTH)プロジェクト」です。筆者の個人的に存じている顔がちらほら混じっています。