電子レンジのボタン。「レンチン(レンジでチンする)」という言葉も普及し、電子レンジは手軽に使える調理器の代表格となった。

 今やどこの家庭にもある電子レンジ。火を使わずに短時間で食品を温めたり、調理したりできる便利な調理器具だ。あらためてその仕組みを探ってみた。

“電子レンジなし”の不便さを実感

 電子レンジが壊れてしまった。新しいものをすぐに購入すればよいのだが、タイミングを外し、電子レンジのない生活を強いられている。

 何より不便なのは、ごはんやおかずの温め直しに時間と手間がかかること。電子レンジを使わないで食品を温めようとすると、ゆでたり、蒸したり、フライパンにのせてみたりと知恵を絞ることになる。食品を加熱する時間がかかるばかりでなく、その準備に手間もかかる。電子レンジならわずか1~2分でできるところが、気が付けば30分も経っていることがある。

 コンビニエンスストアなどで売っている便利な総菜や冷凍食品には、電子レンジで温められるようになっているものが多い。せっかくレンジ対応のパッケージになっている製品なのに、レンジが壊れているからとわざわざ鍋に移し変えてガスで温め直すのもむなしい。そのようなわけで、最近では冷凍食品やお惣菜に手が伸びなくなってしまった。そして、それだけ電子レンジが私たちの食生活に浸透しているのだと実感する。

単身世帯でも普及率9割超、あって当然の存在に

 総務省統計局が2015年に公表した「平成26年全国消費実態調査」によれば、電子レンジの普及率は2人以上の世帯で97.8%、単身世帯で92.4%だった。今や電子レンジがあるのは当たり前、電子レンジのない家庭を探すほうが難しそうだ。

 電子レンジが発明されたのは1940年代のことで、レーダーの研究がきっかけだった。米国のレーダー技師パーシー・スペンサーが、レーダー機器を組み立て中にポケットの中のチョコレートが溶けていたことに気が付いたためという逸話が残っている。その後、多くのスタッフが検討を重ね、1947年に米国のレイセオン社から電子レンジが発売された。

 日本では1961年にまず業務用が、続いて翌年に家庭用の電子レンジが発売された。最初の電子レンジは、大卒の初任給が1万7000円だった時代に54万円もした。1964年に開通した東海道新幹線のビュフェに電子レンジが装備されて話題になり、電子レンジの普及に一役買った。とはいえ、まだサイズも大きく高級品だった。