若手社員の潜在能力と意欲を引き出すには、表彰制度の活用も有効だ(写真はイメージ)

指示待ち族が見違えるほど変身

 大手メーカーの課長が次のように語っていた。スポーツで怪我をしてしばらく会社を休んでいたが、仕事のことが気になってしかたがない。なにしろ部下は事細かく指示しなければ仕事をやろうとしない典型的な「指示待ち族」だからだ。きっと自分がいなければ部下はパニックに陥り、職場は大混乱しているだろう。そう思って職場に電話を入れてみると、意外なことに彼が自分の代役をこなし、仕事は以前よりスムーズに回っているという。それを聞いて彼は安心する一方、自分の存在感の軽さを知り寂しくなったそうである。

 同様のケースはほかにもある。公務員の意欲や働き方については世間の批判が絶えないが、被災地に派遣された職員の働きぶりはどこでも賞賛されている。テキパキと仕事をこなし、ふだんとは別人のようだったともいわれる。それがきっかけで成長し、元の職場に戻っても高い意欲を保ち続けている職員が少なくない。

 大企業や役所には中間管理職が多く、そこに重要な仕事も実質的な権限も集中している。彼らが組織を動かしているといってもよいくらいだ。それだけに第一線にいる若手はなかなか出る幕がない。だから意欲がないように見えるのである。実際、若手の口からは、新しい提案をしてもなんだかんだといってつぶされるし、細かいことも自分で決められないのでやる気が出ないという不満が漏れ聞こえる。

 根本的な改善策としては組織をスリム化、フラット化し、彼らに権限を委譲することが望ましい。しかし組織の改革には抵抗が強く、管理職は権限をなかなか手放そうとしないのが現実だ。