数パーセント、あるいは数十パーセントの改善のために、これまで膨大なシステム投資を行ってきたが、それはいったい何だったのだろう。それが限界であり常識だと思っていた。しかし、そんな常識はもはや過去の話だ。

 設備も人も部材も外注先も、全てがセンサーから送られたデジタルデータで把握されネットにつながり、リアルタイムで現場が把握される。いわば、コンピュータの中に「現場の全てが再現」されている。そして、再現された「デジタルな全ての生産資源」を使い、条件を変えながら手配や段取りの最適なやり方をAIが見つけ出してくれる。そして現場を動かし、変化した現場の状況が再びコンピュータに戻され、最適なやり方を更新してゆく。

 コンピュータ世界にある「再現されたデジタルな現場」と「実際の工場の現場」が一緒になってリアルタイムで改善活動を繰り返しながら、最適な手配や段取りを進めてくれる。同じシステム投資でも、かつてとは桁違いの効果だ。

「おっと、また新しい注文だ。これもまたやっかいなオーダーだなぁ」

 また過去の苦労が脳裏をよぎり、また愚痴が口をついてしまった。もう、そんな必要もないのだが。

デジタルトランスフォーメーションの目指す姿

「デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)」

 そんな言葉をあちらこちらで目にするようになりましたが、その目指す姿がこの物語です。

 何パーセント、あるいは、十数パーセントの改善ではなく、何倍、何十倍の成果を手にする取り組みが、デジタルトランスフォーメーションの目指していることです。センサーやネットワーク、AIなどのテクノロジーを駆使して、ビジネスの仕組みを根本的に作り替えてしまおうというわけです。

 こんな変革の取り組みは、製造業に限った話ではありません。流通業や金融業、サービス業や公共事業にもデジタルトランスフォーメーションの波が押し寄せ、これまでの常識を上書きしようとしています。