宅配クライシスに悩む宅配事業者は、このプラットフォームからどのようなメリットを得られるのか。

 まず、繁閑差の軽減や効率化・最適化を期待できる。そもそも宅配事業は、季節や時間帯による需要変動が大きく、ピークに合わせて人員を固定化すると人件費が過剰になってしまうため、いかにして需要の偏在を減らし固定費の変動幅を小さくするかが悩みの種であった。したがって、需要の偏在がある山間部などの地域や繁忙期に他の外部配送者を活用できればコスト削減を達成できる。

 次に、このプラットフォームでは、荷物の種類に応じて配送員を変えることが可能となる。例えば宅配事業者は品質や信頼性の求められる対面配送を担当し、それ以外の配送者は店舗やロッカーへの配送やポスト投函が可能なダイレクトメール等の配送を担う。

 仮にこのようなビジネスモデルに転換した場合、宅配事業者はこれまでに培った信頼性を活かした、付加価値の高い業務を軸とした新規事業分野への進出を図ることが考えられる。利用者1人当たりに接する時間を増やせることを活かし、きめ細やかな御用聞きといったサービスへの原点回帰が見られるかもしれない。

 いつの時代もボトルネックから破壊的創造が起こる。ラストマイルの短距離輸送は、消費行動のEC化が爆発的に進む中で、世界各国でボトルネックとなっている。日本の宅配事業では低価格・高品質・短時間配送というガラパゴス化が進んでいたが、「宅配クライシス」を機とした革新が待ったなしだ。

(執筆)
野村総合研究所 社会システムコンサルティング部
社会インフラグループ 副主任コンサルタント
波利摩 星也

野村総合研究所 グローバルインフラコンサルティング部
運輸・物流・交通インフラグループ コンサルタント
田原 綾乃

(監修)
同 運輸・物流・交通インフラグループ グループマネージャ
若菜 高博

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