こんなふうに言うと、幻滅される人もいるでしょう。でも私たちが教授職として生徒にレッスンするすべては、暴力も薬物も用いずに、その人の演奏を初めて耳にする人が サッと顔色を変えるくらい、鮮やかなパフォーマンスを確実にできるようにすることです。

 ですから、「マインドコントロールである」と冷徹に割り切って徹底して教えるのが職業人と言うものでしょう。

 声が小さく説得力のある歌が歌えない声楽の受験生がいたとしましょう。実際よくいます。

 声楽を志望するくらいですから、歌は嫌いではない。でもそれは人に聴かせる歌になっていないのです。自分でいい気になってしまう。これでは謝礼をいただいて音楽で食べていくことはできません。

 そういう学生に指導する1つに「壁を狙え」という方法があります。

 自分の歌声を、部屋の中の特定の壁に向けて歌いかけ、その反響音を、確実に自分の耳で確かめながら、歌ってごらん。ゆっくりでいいから・・・。

 といったレッスンを進めていくと、45分以内に全然違うものが出来上がってきます。そうして若き日の私はいくばくかのレッスン料を頂戴し生活の足しにしたわけです。

 ここには明確な方法があります。文字で読むだけでは絶対に無理なので安心して記しますが、声を壁に当てる、それを聴く(アプリシエートすると言います)だけで、実は背筋も伸び、肩口などもふらふらしなくなります。

 また無駄に早口にもならず、子供タイプのビジネスプレゼンテーション病の問題、8割方は解決してしまいます。

 それでも、人間の体ですから、いろいろ問題が残ります。そこでは「アレクサンダー・テクニック」とか「フェルデンクライス・メソッド」などを援用して、ちょっとだけ修正をしてやります。これはさすがにレッスン室に来ていただかないと指導できません。

 そうすると、まずもって100%、かなりきちんとしたことが、1回はできるようになります。