そういうところでは、逆立ちしても教えない、でも私のところでは最初に教える、分かりやすいピンポイントのレッスンをいくつかご紹介しましょう。

 例えば、声が小さすぎて聞こえない、というケースがあります。

 何をしゃべってるのか、ぜんぜん分からない。早口で、ぼそぼそしていて、言いたいことの意味内容がそもそも分からない。

 しかし、これはビジネスプレゼンテーションであるはずです。相手を口説いて落とさなければならない。大きい声で、しっかり、一言一言伝わるように話しましょう。

 ここまでは、誰でも言えると思います。

 この先が微妙で、「心をこめて話しましょう」的な話は、悪くはないのですが、下手すると精神主義に陥ります。

 桐朋学園を率いられた斉藤秀雄先生(1902-74)は、チェロや指揮にメソッドを持っており、飛びぬけた才能がなくとも、まじめに一生懸命やれば、食べていけるだけの方法を確実に教える教育方針を徹底されました。大切な貢献と思います。

 私自身は斉藤先生に直接指導を受けたことのない世代で、斉藤門下最初期のOBである橘常定先生に師事しましたが、斉藤先生のメソッドなしには、私自身、自分の受けた教育も、大人になってからの仕事も、何一つあり得ないと痛感しています。

 しかし斉藤先生も神様ではなかった。「歌う」というようなことについて、きわめてナイーブだったんですね。