地方都市で中規模のタクシー会社を経営する男性は、こうコメントする。「孫氏は、生活のすべてをスマホで行えるようにする情報革命の実現を急いでいる。その第一歩なのではないか」。

 中国では、スマホを使って“白タク”を配車し、スマホを使って決済するIT革命が進んでいる。「支付宝」などの決済アプリには預金機能もあれば、融資機能もある。しかし、日本では白タク行為はもちろん違法だし、スマホ決済も普及していない。日本人は相変わらず現金での決済を好み、タクシー業界においても数々の規制がIT化を阻んでいる。

 孫氏は日本のさまざまな岩盤規制をぶち壊し、あらゆる領域で情報革命を引き起こそうとしているのではないか、というのがその男性の見方だ。孫氏にとって、日本のタクシー業界への間接的参入は、これから始まる一大ストーリーの序章に過ぎないというわけだ。

日本の生の地図データが丸ごと中国に

 実は、この連携は滴滴に大きなメリットをもたらす可能性がある。日本の膨大な生の地図データを入手することができるからだ。

 タクシーに搭載されたドライブレコーダーには、どこに新しい道ができ、どこが工事中で、どこで取り締まりが行われているなどの情報が日々蓄積される。そこに、行き先情報や顧客情報などが加われればたちまちビッグデータに変わり、グーグルマップ以上の価値を帯びることだろう。

 中国では地図は機密情報として厳しい管理が行われている。国の主権、安全と利益に密接に関わるものとして、民間による地図作製が管理されており、当局の許可を受けずに地図を作製した事業者は処罰の対象になる。