日本で増加している白タクを撲滅するため、という理由は考えられる。同社の田中亮一郎社長は全国ハイヤー・タクシー連合会で副会長を務めており、“業界の最大の敵”である白タクの撲滅を目指している。正規のタクシーによる中国人観光客の運送が増えて白タクを駆逐するのなら、業界にとっては朗報だろう。

 一方、滴滴にとってのメリットは何か。

 日本は配車アプリの空白地域であり、滴滴にとって垂涎の的であることは間違いない。ウーバーの中国事業を飲み込んだ滴滴からすれば、日本は、さらに世界シェアを広げるための重要な足掛かりになるといえよう。

 だが日本では自家用車を使って有償で客を乗せる行為、つまり白タクは禁じられている。そこで、彼らは日本のインバウンド市場に目を付けた。日本に来た中国人観光客にとって中国語アプリでタクシーを呼べたら確かに便利である。

 とはいえ、中国からの年間訪日客数はたかだか600万人程度。第一交通の車両保有台数も、日本最多とはいえ約1万5000台だ。中国で滴滴が抱える1330万人(2016年4月時点)の運転手と比べると桁違いに少ない。日本が利益を出せる市場だとは滴滴も思っていないはずだ。

「壮大なストーリー」の一環なのか

 滴滴と第一交通の連携は、“ある人物”が描く壮大なストーリーの一環ではないかという見方がある。その人物とは、滴滴に50億ドルを出資しているソフトバンクグループの総帥、孫正義氏だ。