ヤンゴン市内を一周する環状鉄道の改良に向けて2015年6月に来日し、JR秋田駅から南西約6キロに位置する豊岩踏切を訪れたMR幹部たちは、上下2本の在来線の線路を列車がひんぱんに行き交い、その合間に車両や歩行者が整然と横断する様子を興味津々な様子で視察。

 降りしきる雨の中、「警報機は列車の運転士と自動車の運転手、どちらのためのものですか」「遮断機のせいで線路に車が閉じ込められることはありませんか」などと、案内役のJR社員を質問攻めにしていた。

 特に彼らが驚いたのは、自動的に警報機が鳴って遮断機が降りた踏切を、列車がスピードを落とさず通過していく様子だ。

 一行は、視察を終えてからも、車両や歩行者と衝突する危険を列車の運転士が判断しているミャンマーと、列車の走行がシステムで完全に守られている日本の踏切の違いについて、興奮気味に話し合っていた。

踏切柵を引き出す警手の横を二輪車が次々と通り抜けていく(マンダレー市内で2015年11月撮影)

 近年、日本では、新規路線で新たに踏切を建設することを原則として認めず、立体交差や高架化によって対応している上、踏切事故のリスクを低減すべく、重大事故が発生しやすい踏切の廃止にも積極的に取り組んでいるという。

 さまざまな踏切技術を積み重ね、線路と道路の交差点の事故防止に努めてきた日本の知見をミャンマーで生かそうと、5月初旬から3週間かけて駅や踏切を丹念に確認した4人。

 「日本の国内で培った技術をこの国のために生かせるのは嬉しい」「踏切事故をなくすことで、この国の子どもたちが安心して生活できるようになってほしい」という願いが実を結び、踏切事故がなくなることを切に祈る。

(つづく)