「これまでのように、踏切のたびに速度を落としたり止まったりしていては運行が安定しません」「スピードが上がれば上がるほど、列車はすぐに止まれなくなる。だからこそ、踏切が所定の時間内に閉まるように自動化し、横断者を確実に遮断する必要があるのです」と武元さんが話す。

 その隣で、「エネルギーは速度の2乗に比例します。速度が3倍になれば、衝突時のエネルギーは9倍になるんですよ」と続ける小倉さんの言葉に、状況の深刻さを再認識した。

課題は電気とコスト

 鉄道の近代化が進むミャンマーにおいて、踏切が担うべき役割は非常に大きい。レールのゆがみや路盤の整備不良が原因で列車の速度が遅く、鉄道と人々の生活の距離が非常に近いためだ。

 線路上にござを敷き魚や野菜を売っている人や、道路代わりに線路上を歩く人々の姿も珍しくない。さらに、「勝手踏切」の存在も悩ましい。

 踏切警手もいなければ踏切柵も設置されておらず、歩行者や二輪車、乗用車が文字通り「勝手に」横断する「踏切もどき」が、沿線のあちこちにある。

 線路内のどこに人がいるか分からなければ、列車はスピードを出せず定時運行に支障がある上、事故のリスクも高い。だからこそ、踏切の自動化にはミャンマー国鉄(MR)も高い関心を寄せる。

 踏切を自動化することで、確実に、かつ、早く列車の接近を検知して道路を遮断し、安全な走行と事故の防止が可能になるからだ。

ソァ駅の構内で電源の場所を確認する徳廣さん