残業のない職場を観察していると、社員のモチベーションが一般の企業とは明らかに違うことに気がつく(写真はイメージ)

残業ゼロで好業績の企業

「働き方改革」の本丸は長時間労働の改善である。しかし政府や労使が掲げている目標を見ると、あまりにも中途半端な印象を受ける。たとえば残業を減らすのではなく、思い切って原則ゼロにすることを目標にすべきではないか。

 ドイツをはじめヨーロッパの国々では、経営幹部は別にして一般の社員はよほどのことがないかぎり残業をしない。仕事があろうがなかろうが定時になると仕事を切り上げて帰り、家族や友人とプライベートな時間を過ごす。有給休暇もめいっぱい取得するので正社員の年間総労働時間は日本より3カ月近く短い。にもかかわらず生産性は日本より高い。

 わが国でも岐阜県にある建材メーカーの未来工業は、日本一労働時間が短い会社として知られている。年末年始やゴールデンウィーク、お盆の休みはそれぞれ15日~20日ほどある。そのうえ勤務時間は午前8時半~午後4時45分と短く、残業はないので自宅が近い社員は5時には帰宅している。それでも同社は増収増益を続けており、給与水準も地域でトップ水準だ。

 未来工業のほかにも、残業をゼロにしたら生産性が上がったという中小企業は少なくない(拙著『ムダな仕事が多い職場』を参照していただきたい)。

 残業しないにもかかわらず生産性が高い、あるいは残業をなくすと生産性が上がるのはなぜだろうか?